第1番札所 霊山寺の境内
第1番札所 霊山寺の境内

四国八十八ヶ所、全行程約1400キロにも及ぶ「祈りの旅」はここから始まります。徳島県鳴門市にある第1番札所・霊山寺(りょうぜんじ)

これからお遍路を始めようと決意された方にとって、ここは単なる最初のお寺ではありません。日常から非日常へ、そして自分自身と向き合う「発心(ほっしん)」の道場への入り口です。
本記事では、1200年の時を超えて巡礼者を迎え入れてきた霊山寺の歴史、境内の見どころ、そして参拝に役立つ情報を、旅のガイド役として詳しくご紹介します。

山号・院号 竺和山 一乗院(じくわざん いちじょういん)
宗派 高野山真言宗
御本尊 釈迦如来(しゃかにょらい)
開基 行基菩薩
御真言 ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バク
御詠歌 霊山(りょうぜん)の 釈迦(しゃか)の御前(みまえ)に めぐりきて よろずの罪(つみ)を 消(け)しきぬるかな (意味:霊山寺のお釈迦様の御前に巡り来て祈れば、これまでの多くの罪も消えていくことだ)

1番札所・霊山寺の歴史と縁起

霊山寺の歴史は古く、奈良時代にさかのぼります。天平年間(729〜749年)、聖武天皇の勅願により、名僧・行基菩薩が開基したと伝えられています。

その後、平安時代に入り、弘法大師(空海)がこの地を訪れました。大師は、この寺の景色がお釈迦様が説法を説かれたインドの聖地「霊鷲山(りょうじゅせん)」に似ていることに感銘を受け、インドの霊地を日本に移すという意味を込め、「竺和山 霊山寺」と名付けたとされています。

かつては阿波国(徳島県)の三大巨刹として栄え、七堂伽藍を持つ壮大な寺院でしたが、天正10年(1582年)、長宗我部元親の兵火により堂塔が焼失。その後も火災に見舞われましたが、その都度、歴代藩主や信徒の手により復興を遂げ、現在も「四国遍路の出発点」として、多くの巡礼者を温かく迎え入れています。

境内の見どころ:巡礼の始まりを感じる3つのポイント

境内に入ると、そこには凛とした空気が流れています。お参りの際にぜひ注目していただきたいポイントを3つ厳選しました。

1. 巡礼者を迎える「仁王門」

まず参拝者を迎えるのが、重厚な造りの仁王門です。ここを一歩くぐれば、そこは俗世を離れた仏の聖域。門の両脇には、運慶の作と伝えられる金剛力士像が鋭い眼光で立っています。これから始まる長い旅路に向け、身も心も引き締まる瞬間です。一礼して門をくぐり、一歩を踏み出しましょう。

2. 灯籠が幻想的な「本堂」

参道の奥に佇む本堂は、室町時代の様式を伝える荘厳な建築です。特に印象的なのは、天井から吊り下げられた無数の灯籠です。薄暗い堂内でほのかに揺らめく灯りは、巡礼者たちの祈りの光そのもの。
御本尊の釈迦如来は秘仏ですが、その前で手を合わせる時、お遍路の安全と大願成就を祈らずにはいられません。静寂の中で読経の声が響く、神秘的な空間を体感してください。

3. お遍路用品がすべて揃う「売店・納経所」

霊山寺ならではの特徴として、非常に充実した売店が挙げられます。白衣(びゃくえ)、菅笠(すげがさ)、金剛杖(こんごうずえ)といった「お遍路の三種の神器」をはじめ、納経帳や線香、ろうそくなど、巡礼に必要な道具はすべてここで揃えることができます。
「何を買えばいいかわからない」という初心者の方でも、専門のスタッフが親切に教えてくれるので安心です。ここで身支度を整えることが、巡礼者としての最初の儀式とも言えるでしょう。

御朱印・納経について

参拝を終えたら、納経所にて御朱印(納経)をいただきましょう。
第1番札所である霊山寺の御朱印は、お遍路の始まりを記す記念すべきものです。墨書される「奉納」の文字と、中央に押される朱印は、これから88の寺院を巡る長い旅の証となります。

また、納経帳の最初のページには、弘法大師が描かれていることが一般的ですが、ここ霊山寺で最初の御朱印をいただく瞬間の高揚感は、何物にも代えがたい思い出となるはずです。

アクセス・駐車場・参拝案内

  • 所在地: 徳島県鳴門市大麻町板東塚鼻126
  • 公共交通機関: JR高徳線「板東駅」下車、徒歩約10〜15分。駅から寺院までの道には緑色の誘導ラインが引かれており、迷わず到着できます。
  • 駐車場: あり(無料)。普通車100台、バス10〜20台が駐車可能な広大なスペースがあり、車遍路の方も安心です。
  • 次の札所へ: 第2番札所「極楽寺」までは約1.4km。徒歩で約20分、車で約5分の距離です。

まとめ:一番札所から心の旅へ

第1番札所・霊山寺は、単なる観光地ではなく、自分自身を見つめ直す旅の「原点」です。 境内を歩き、お経を唱え、御朱印をいただく。その一つ一つの所作が、日常の喧騒で疲れた心を癒やしてくれることでしょう。

準備が整ったら、金剛杖を手に、次なる札所へと歩みを進めてください。ここから始まる四国の旅が、あなたにとって実り多きものとなりますように。南無大師遍照金剛。