第8番札所 熊谷寺の境内
第8番札所 熊谷寺の境内

第7番札所から西へ約4キロ。田園風景から少しずつ山深い景色へと変わる場所に、第8番札所・熊谷寺(くまだにじ)があります。

このお寺の最大の特徴は、何と言っても参拝者を圧倒する巨大な「仁王門」。四国霊場の中でも最大級の規模を誇り、県の文化財にも指定されています。
春には早咲きの桜が境内を彩り、静寂の中に華やかさを添える熊谷寺。千手観音のご利益と、歴史の重みを感じる山寺の魅力をご案内します。

山号・院号 普明山 真光院(ふみょうざん しんこういん)
宗派 高野山真言宗
御本尊 千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)
開基 弘法大師(空海)
御真言 オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ
御詠歌 薪(たきぎ)つみ 水(みず)くみ結(むす)ぶ 寺(てら)なれば 後(のち)の世(よ)までも 利益(りやく)のこさん (意味:薪を積み水を汲んで修行したこの寺のご縁は、現世だけでなく来世までもご利益を残すだろう)

8番札所・熊谷寺の歴史と縁起

熊谷寺の歴史は、弘法大師がこの地の「閼伽ヶ谷(あかがたに)」という場所で修行したことに始まります。その際、金色に輝く千手観音菩薩が現れ、大師は自らその像を刻んで安置し、寺を開きました。

かつては四国山脈の山中にありましたが、火災による焼失を経て、江戸時代の初期に現在の場所へ移されました。
御詠歌にある「薪つみ水くみ」とは、お釈迦様の前世での修行の様子を指しており、この地が古くから厳しい修行の場であったことを伝えています。現在も静かな境内には、修行の霊気が漂っているかのようです。

境内の見どころ:壮大な門と花の寺

熊谷寺を訪れると、そのスケールの大きさと、四季折々の自然の美しさに驚かされます。

1. 四国最大級の「仁王門」

参道入口にそびえ立つのが、高さ約13メートルを誇る壮大な仁王門です。貞享4年(1687年)に建立されたもので、和様と唐様が折衷された見事な建築様式は、徳島県の指定有形文化財となっています。
門をくぐり、天井を見上げれば極彩色の装飾が施されており、これから聖域に入るという期待感を高めてくれます。

2. 静寂を映す「多宝塔」と「弁天島」

仁王門を抜けて参道を進むと、美しい多宝塔が見えてきます。安永3年(1774年)に建てられたこの塔の内部には、極彩色の胎蔵界大日如来などが祀られています。
また、参道沿いにある放生池には「弁天島」と呼ばれる小島があり、弁財天が祀られています。水面に映る木々の緑と、静かな水音が参拝者の心を癒やします。

3. 春を告げる「熊谷桜」

熊谷寺は、桜の名所としても知られています。特に「熊谷桜(くまだにざくら)」と呼ばれる早咲きの桜(蜂須賀桜)が有名で、ソメイヨシノよりも一足早く、2月下旬から3月中旬頃にかけて濃いピンク色の花を咲かせます。
山門の重厚な雰囲気と、可憐な桜のコントラストは、この時期だけに見られる特別な風景です。

御朱印・納経について

参拝後は納経所へ。熊谷寺の御朱印には、千手観音を表す梵字(キリーク)と「本尊 千手観世音」の文字が記されます。
千の手と千の眼で人々を救う観音様の慈悲が込められた御朱印は、旅の安全を守る心強い支えとなるでしょう。

アクセス・駐車場・参拝案内

  • 所在地: 徳島県阿波市土成町土成字前田185
  • 第7番からの距離: 第7番札所・十楽寺から約4.2km。徒歩で約1時間、車で約10分。田園と山並みを眺めながらの移動となります。
  • 駐車場: あり(無料)。仁王門の近くに広い駐車場があります。(ただし、駐車場から本堂までは少し坂道と階段を登ります)
  • 次の札所へ: 第9番札所「法輪寺」までは約2.4km。徒歩で約40分、車で約10分の距離です。

まとめ:大門をくぐり、静寂の谷へ

第8番札所・熊谷寺は、圧倒的な存在感を放つ仁王門と、その先に広がる静寂な空間が魅力のお寺です。 日常を忘れさせてくれるような深い緑と、美しい花々に囲まれながら、千手観音様に手を合わせる。そんな心洗われる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。