別格7番から山を下り、大洲市(おおずし)の市街地へ。国道56号線が走る交通量の多い橋の下に、別格8番・十夜ヶ橋(とよがはし)があります。お寺の正式名称は「永徳寺(えいとくじ)」といいます。
「橋の上では杖をつかない」。お遍路さんが必ず守るこのルールの起源となったのが、まさにこの場所です。
かつて弘法大師が寒さに震えながら野宿をしたこの橋の下は、今も大師の息遣いを感じられる特別な聖地となっています。
| 山号・院号 | 真念山 養老院(しんねんざん ようろういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗醍醐派 |
| 御本尊 | 弥勒菩薩(みろくぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・マイ・タレイヤ・ソワカ |
| 御詠歌 | 行(ゆ)き悩(なや)む 浮世(うきよ)の人(ひと)を 渡(わた)さずば 一夜(いちや)も十夜(とよ)の 橋(はし)と思(おも)ほゆ (意味:行き場に悩む人々を彼岸へ渡し救うことができなければ、たった一夜の野宿も、十夜もの長さに感じられるほど辛い、この橋の上で思うことだ) |
別格8番・十夜ヶ橋の歴史と縁起
弘法大師が四国を巡錫中、大洲の地を訪れましたが、日が暮れても泊めてくれる宿が見つかりませんでした。
仕方なく大師は、小川にかかる粗末な丸太橋の下で一夜を明かすことにしました。
季節は冬。冷たい風が吹き抜け、空腹と寒さに耐える一夜は、まるで十回もの夜を過ごしたかのように長く辛いものでした。
夜が明け、大師は御詠歌にもある「一夜も十夜の橋と思ほゆ」という歌を詠んで旅立ちました。
以来、この橋は「十夜ヶ橋」と呼ばれ、橋の下には弘法大師がいらっしゃると信じられるようになり、「大師を起こさないように、橋の上では金剛杖をつかない」という習わしが生まれました。
境内の見どころ:橋の下の祈りと布団
このお寺の最大の見どころは、本堂ではなく「橋の下」にあります。国道の下へ降りてお参りしましょう。
1. 橋の下の「野宿大師像」
橋の下へ降りると、そこには横になって眠る弘法大師の石像「野宿大師」が祀られています。
大師の辛い一夜を偲び、多くの参拝者が「お大師様が寒くないように」と布団を奉納するため、石像はいつも温かい布団にくるまれています。
頭上を車がビュンビュンと通過する音を聞きながら手を合わせると、大師の修行の厳しさが肌で感じられ、思わず涙するお遍路さんも少なくありません。
2. 「杖をつかない」ルールの発祥地
すべての橋の下には弘法大師が眠っているかもしれない。
だから、お遍路さんはどんな橋を渡る時でも、大師の睡眠を妨げないように金剛杖を地面につかずに静かに渡ります。その精神の原点がここにあります。ぜひこの場所で、同行二人の絆を再確認してください。
3. 納経所と本堂
橋のたもとには本堂と納経所があります。
納経所では、橋の下で眠る大師を描いた御影や、布団をかたどったお守りなどが授与されています。別格霊場の中でも特に印象深い参拝となるはずです。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。別格霊場の御朱印をいただきます。
ここは「四国霊場の橋」にまつわる最も重要な聖地です。御朱印を見るたびに、大師の慈悲と旅の心を思い出すことでしょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県大洲市東大洲1808
- 位置関係: 国道56号線沿いにあり、アクセスは非常に便利です。八十八ヶ所巡りでは、内子町から大洲市へ入るルート上にあり、第43番・明石寺へ向かう途中で立ち寄ることができます。
- 別格7番からの距離: 別格7番・出石寺から車で約40分。山道を下りきった平野部にあります。
- 駐車場: あり(無料)。境内に広い駐車場があります。
- 次の別格札所へ: 別格第9番「文殊院(もんじゅいん)」までは約45km。松山市方面へ戻るようなルートになります。
まとめ:お大師様を最も身近に感じる場所
別格8番・十夜ヶ橋は、弘法大師も私たちと同じように寒さやひもじさを味わい、苦労されたことを教えてくれる場所です。 橋の下で静かに眠る大師像に「お疲れ様でした」と声をかけ、私たち自身の旅の安全も見守っていただきましょう。