第8番札所から約2.4キロ。見渡す限りの田園風景の中に、ひっそりと佇むのが第9番札所・法輪寺(ほうりんじ)です。
ここは「田中の法輪さん」として親しまれ、四国八十八ヶ所霊場の中で唯一、「涅槃釈迦如来(ねはんしゃかにょらい)」、通称「寝釈迦(ねしゃか)」を御本尊としています。
お釈迦様が最後を迎える様子を表したこの珍しい仏様と、健脚祈願の「わらじ」が有名な、心身の癒やしスポットをご案内します。
| 山号・院号 | 正覚山 菩提院(しょうかくざん ぼだいいん) |
|---|---|
| 宗派 | 高野山真言宗 |
| 御本尊 | 涅槃釈迦如来(ねはんしゃかにょらい) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バク |
| 御詠歌 | 大乗(だいじょう)の ひつぎをここに 法輪寺(ほうりんじ) かへすは罪(つみ)の きえてゆくなり (意味:お釈迦様の棺があるこの法輪寺にお参りすれば、これまでの罪も消えていくことだ) |
9番札所・法輪寺の歴史と縁起
法輪寺の開創は弘仁6年(815年)。弘法大師がこの地で白蛇を見つけたことに由来します。
白蛇は仏様の使いとされることから、大師はこれを吉兆と感じ、自ら釈迦如来の涅槃像(横たわって入滅する姿)を刻んで本尊としました。この時、御本尊を「白蛇山 法林寺」と号したのが始まりとされています。
天正10年(1582年)、長宗我部の兵火により全焼しましたが、住職が御本尊だけは守り抜こうと山中へ避難させたと伝わります。その後、正保年間(1644〜1648年)に現在の場所に再建され、明治時代に現在の寺号になりました。
境内の見どころ:唯一の寝釈迦と健脚祈願
田園の中に溶け込むような穏やかな境内ですが、ここには他のお寺にはない特別な祈りの対象があります。
1. 霊場唯一の「涅槃釈迦如来」
法輪寺最大の特徴は、御本尊が「寝釈迦」であることです。お釈迦様が北を枕に西を向き、右脇を下にして静かに横たわるお姿は、煩悩が消え去った悟りの境地(涅槃)を表しています。
秘仏のため通常は拝観できませんが、5年に一度開帳されます。静かな境内で手を合わせれば、日々の忙しさを忘れ、心の平穏を取り戻せるでしょう。
2. 足腰を守る「健脚祈願のわらじ」
このお寺は「健脚」のご利益でも有名です。かつて弘法大師が健脚を祈願したという伝説にちなみ、本堂や仁王門にはたくさんの「草鞋(わらじ)」が奉納されています。
「お遍路で足が痛くなりませんように」「いつまでも自分の足で歩けますように」という切実な願いが込められており、足腰の治療やリハビリ中の方も多く訪れます。
3. のどかな「田園風景」
法輪寺のもう一つの魅力は、そのロケーションです。周囲をのどかな田畑に囲まれ、高い建物がないため空が広く感じられます。
山深い難所を越えたり、長い階段を登ったりすることの多いお遍路ですが、ここでは平坦な参道をゆっくりと歩き、日本の原風景のような景色に癒やされるひとときを過ごせます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。法輪寺の御朱印には、釈迦如来を表す梵字(バク)と「本尊 涅槃如来」の文字が記されます。
「涅槃(ねはん)」の文字が入った御朱印は非常に珍しく、四国八十八ヶ所巡礼の中でも貴重な授かりものとなります。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 徳島県阿波市土成町土成字田中198-2
- 第8番からの距離: 第8番札所・熊谷寺から約2.4km。徒歩で約40分、車で約10分。平坦で歩きやすい道のりです。
- 駐車場: あり(無料)。山門前に普通車用の駐車場が整備されています。
- 次の札所へ: 第10番札所「切幡寺」までは約3.8km。徒歩で約1時間、車で約10分の距離です。
まとめ:静寂の中で心と足を休める
第9番札所・法輪寺は、お釈迦様の最期の安らかな姿と、巡礼者の足を守る優しさに満ちたお寺です。 唯一の寝釈迦様に手を合わせ、わらじに願いを込める。田園の風に吹かれながら、心も体もリフレッシュして、次の旅路へと進んでください。
