別格8番から松山市方面へ約45キロ。八十八ヶ所第46番・47番札所の近くに、別格9番・文殊院(もんじゅいん)があります。
ここは四国遍路の始まりと言われる伝説の人物、「衛門三郎(えもんさぶろう)」の屋敷があった場所です。
かつて強欲だった三郎が、弘法大師への非礼を悔いて旅に出た「発心(ほっしん)」の地。知恵の仏様・文殊菩薩を祀り、学業成就やボケ封じのお寺としても親しまれています。
| 山号・院号 | 磯馴山(そなれざん) | |
|---|---|---|
| 宗派 | 真言宗醍醐派 | |
| 御本尊 | 地蔵菩薩・文殊菩薩 | |
| 開基 | 弘法大師(空海) | |
| 御真言 | オン・カカカ・ビ・サンマエイ・ソワカ | オン・アラハシャ・ノウ |
| 御詠歌 | 我(われ)を信(しん)じ まことの道(みち)を 歩(あゆ)めとは 仏(ほとけ)の誓(ちか)い 新(あら)たなりけり (意味:私(仏)を信じて真実の道を歩みなさいという、仏様の誓願は今も新しく、私たちを導いてくださる) |
別格9番・文殊院の歴史:衛門三郎伝説
平安時代の初め、この地には衛門三郎という強欲な豪農が住んでいました。
ある日、托鉢に訪れた僧侶(弘法大師)を、三郎は追い払おうとして、持っていた鉄の鉢を叩き落とし、8つに割ってしまいました。
その翌日から、三郎の8人の子供たちが次々と亡くなるという不幸が襲いました。
三郎は、あの僧侶が弘法大師であったと気づき、自らの行いを深く悔い改めました。そして、大師に詫びるために全財産をお布施として出し、家族の菩提を弔うために四国巡礼の旅に出たのです。
彼が21回目の巡礼で「逆打ち(時計回りとは逆)」を行い、第12番・焼山寺の近くでついに大師に許され、往生を遂げるまでの壮大な物語のスタート地点が、ここ文殊院(三郎の屋敷跡)なのです。
境内の見どころ:知恵と懺悔の地
住宅街や田畑に囲まれた静かな境内には、物語の核心に触れる史跡が残っています。
1. 衛門三郎ゆかりの「八つ石」
大師堂の横には、三郎が大師の鉄鉢を叩き割った際に飛び散ったとされる「八つ石」の一部が祀られていると言われています。
遍路の元祖が改心するきっかけとなった出来事に思いを馳せ、自身の旅の安全と心の浄化を祈りましょう。
2. 知恵を授ける「文殊菩薩」
寺名にもなっている文殊菩薩は「三人寄れば文殊の知恵」でおなじみの、知恵を司る仏様です。
学業向上や合格祈願はもちろん、人生の悩みに対して正しい判断ができるような知恵を授けてくれると言われています。
3. お遍路の原点に立つ
境内には衛門三郎と妻の像があり、夫を送り出す妻の姿が印象的です。
すべてを捨てて祈りの旅に出た三郎の覚悟。ここはお遍路さんにとって、改めて「なぜ歩くのか」を問い直す原点の場所とも言えます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。別格霊場の御朱印をいただきます。
近くには八十八ヶ所霊場の第46番・浄瑠璃寺や第47番・八坂寺があり、合わせてお参りする方がほとんどです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県松山市恵原町308
- 位置関係: 八十八ヶ所巡りのルート上(第46番〜第48番エリア)にあり、非常に立ち寄りやすい場所にあります。
- 別格8番からの距離: 別格8番・十夜ヶ橋から車で約1時間。内子・大洲方面から松山市内へ入ります。
- 駐車場: あり(無料)。山門前に駐車場があります。
- 次の別格札所へ: 別格第10番「西山興隆寺(にしやまこうりゅうじ)」までは約35km。今治市・西条市方面へ向かいます。
まとめ:遍路の心を知る始まりの場所
別格9番・文殊院は、四国遍路が「祈りと懺悔の旅」であることを教えてくれる場所です。 衛門三郎の屋敷跡で、先人たちの想いを受け継ぎ、新たな気持ちで次の札所へと歩みを進めてください。