第10番札所 切幡寺の境内
第10番札所 切幡寺の境内

第9番札所から約3.8キロ。山の中腹、標高155メートルの高台に位置するのが第10番札所・切幡寺(きりはたじ)です。

ここは「阿波の難所」の一つとも数えられ、本堂へたどり着くには333段もの急な石段を登らなければなりません。しかし、その苦労の先には、吉野川や阿讃山脈を一望できる素晴らしい絶景が待っています。
また、この寺には「機織り娘」が弘法大師の奇跡によって即身成仏したという、美しくもドラマチックな伝説が残されています。

山号・院号 得度山 灌頂院(とくどざん かんじょういん)
宗派 高野山真言宗
御本尊 千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)
開基 弘法大師(空海)
御真言 オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ
御詠歌 欲心(よくごころ) 義理(ぎり)のハタをば 切(き)りすてて ただ一筋(ひとすじ)に 願(ねが)ふなりけり (意味:欲の心や義理のしがらみ(ハタ)を切り捨てて、ただ一筋に仏道を願うのである)

10番札所・切幡寺の歴史と縁起

切幡寺の伝説は、弘法大師がこの地で機(はた)を織る娘に出会ったことから始まります。

大師が綻びた衣を繕うため、娘に「布切れを一枚頂けないか」と頼んだところ、娘は織りかけの貴重な布を惜しげもなく断ち切って差し出しました。その行いに感銘を受けた大師が「何か望みはないか」と尋ねると、娘は「亡き父母供養のため、千手観音を作ってほしい」と願い、さらに自らも仏門に入りたいと望みました。
大師が千手観音を刻み、娘を得度(出家)させると、娘はたちまち即身成仏し、千手観音の姿に変わったと伝えられています。この「布を切った(切幡)」伝説が、寺名の由来となりました。

境内の見どころ:石段の先の絶景と文化財

333段の階段は大変ですが、登り切った先には素晴らしいご褒美が待っています。特に見逃せないポイントをご紹介します。

1. 心臓破りの「333段の石段」

山門をくぐると、本堂まで続く長い石段が現れます。その数は333段。「女厄坂(33段)」「男厄坂(42段)」など厄除けの意味も込められており、一段登るごとに煩悩が落ちると言われています。
息を切らして登り切った境内からは、眼下に吉野川の雄大な流れと徳島の町並み、遠くには四国山脈まで見渡せるパノラマ絶景が広がり、疲れが一気に吹き飛びます。

2. 国の重要文化財「大塔(二重塔)」

本堂からさらに少し登った場所にあるのが、国の重要文化財に指定されている「大塔」です。
この塔は、豊臣秀頼が父・秀吉の菩提を弔うために大阪の住吉大社に建立したものを、明治時代に移築したものです。日本で唯一現存する方形の二重塔であり、その建築美と歴史的価値は必見です。

3. 女性を救う「はたきり観音」

本堂の右手には、伝説の機織り娘が即身成仏した姿とされる「はたきり観音」の銅像が立っています。
右手にハサミ、左手に長い布を持った珍しいお姿で、特に「女性の成仏」や「技芸上達」、「縁切り(悪縁を切り良縁を結ぶ)」のご利益があるとして、女性の参拝者から厚い信仰を集めています。

御朱印・納経について

参拝後は納経所へ。切幡寺の御朱印には、千手観音を表す梵字(キリーク)と「本尊 千手観世音」の文字が記されます。
333段の石段を登りきった証としていただく御朱印は、格別な達成感とともに、お守りとして輝きを放つことでしょう。

アクセス・駐車場・参拝案内

  • 所在地: 徳島県阿波市市場町切幡字観音129
  • 第9番からの距離: 第9番札所・法輪寺から約3.8km。徒歩で約1時間、車で約10分。平地を歩いた後、最後は山道と階段になります。
  • 駐車場: あり(無料)。山門の手前に駐車場がありますが、そこから333段の石段を登る必要があります。(※中腹まで車で上がれる有料駐車場もありますが、道が狭いため大型バスは不可です)
  • 次の札所へ: 第11番札所「藤井寺」までは約9.3km。徒歩で約2時間半、車で約20分。ここから吉野川を渡り、次のステージへと進みます。

まとめ:布を断ち、迷いを断つ

第10番札所・切幡寺は、石段という物理的な試練と、機織り娘の伝説という精神的な救いが交差する場所です。 布を断ち切るように、心の迷いや悪縁を断ち切り、眼下の絶景を眺めて晴れやかな気持ちで次の旅路へ進んでください。