別格9番から約35キロ。西条市丹原町(たんばらちょう)の山間に、古くから「もみじの西山」として親しまれる名刹、別格10番・西山興隆寺(にしやまこうりゅうじ)があります。
ここは紅葉の美しさもさることながら、苔むした石垣や参道、そして国の重要文化財に指定されている本堂や宝塔など、文化財の宝庫でもあります。
20番札所・鶴林寺や横峰寺にも近い山岳エリアにあり、静寂と歴史の重みを感じさせる荘厳な霊場をご案内します。
| 山号・院号 | 仏国山 勅願院(ぶっこくざん ちょくがんいん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗醍醐派 |
| 御本尊 | 千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ |
| 御詠歌 | 御仏(みほとけ)の 誓(ちか)いを破(やぶ)らず 継(つ)ぐものは 此処(ここ)に西山(にしやま) 興隆(こうりゅう)の寺(てら) (意味:仏様の誓願を固く守り、法灯を絶やすことなく受け継いでいるのは、ここ西山の興隆寺である) |
別格10番・西山興隆寺の歴史と縁起
皇極天皇元年(642年)、空鉢上人がこの山に登り、堂宇を建立したのが始まりとされています。
その後、弘法大師がこの地を訪れ、不動明王を刻んで魔を払い、仏法興隆の霊地として再興しました。
古くから皇室の崇敬が厚く、醍醐天皇や村上天皇などの「勅願寺(ちょくがんじ)」として栄えました。源頼朝や河野氏などの武家からも信仰され、広大な寺領を有していました。
現在も残る立派な伽藍は、その長い歴史と繁栄を今に伝えています。
境内の見どころ:紅葉と文化財の調和
仁王門から続く長い石段の参道は、両脇を杉やモミジの古木に囲まれ、歩くだけで心が洗われるようです。
1. 「もみじの西山」の絶景
西山興隆寺は、愛媛県内でもトップクラスの紅葉の名所です。
秋(11月中旬〜12月上旬)になると、参道を覆うカエデやイチョウが一斉に色づき、石段や苔の緑とのコントラストが息を呑む美しさを見せます。春の桜や新緑も見事で、四季折々の自然美が楽しめます。
2. 国の重要文化財「本堂」
長い石段を登りきると、目の前に現れるのが国の重要文化財に指定されている「本堂」です。
寄棟造りの重厚な建築で、堂内には御本尊の千手観音菩薩(秘仏)が安置されています。12年に一度、午(うま)の年に御開帳が行われます。
3. 優美な「三重塔(宝塔)」
境内の一角には、こちらも国の重要文化財である「宝塔(三重塔)」が建っています。
高さ約18メートル、檜皮葺(ひわだぶき)の美しい塔で、周囲の木々と調和した姿は絵画のような美しさです。他にも「勅使門」など、見ごたえのある建築物が多く残されています。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。別格霊場専用の納経帳に御朱印をいただきます。
こちらは折り返しの第10番札所。ここから次の札所までは距離がありますので、境内のベンチなどで一息入れてから出発しましょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県西条市丹原町古田1657
- 位置関係: 今治市と西条市の境界近くの山あいにあります。八十八ヶ所の第60番・横峰寺、第61番・香園寺からも比較的近いエリアです。
- 別格9番からの距離: 別格9番・文殊院から車で約50分。国道11号線などを経由して東へ進みます。
- 駐車場: あり(無料)。参道の登り口付近に駐車場があります。本堂まではそこから石段を登る必要があります(徒歩約15分)。
- 次の別格札所へ: 別格第11番「生木地蔵(いききじぞう)」までは約45km。西条市から新居浜市を抜け、四国中央市へ向かう長い移動となります。
まとめ:自然と歴史が織りなす癒やしの空間
別格10番・西山興隆寺は、静寂な森の中に佇む文化財と、季節ごとの自然美が心を癒やしてくれるお寺です。 美しい紅葉や苔の緑を目に焼き付け、歴史ある本堂で静かに手を合わせれば、旅の疲れもすっと消えていくことでしょう。