第11番札所 藤井寺の境内
第11番札所 藤井寺の境内

第10番札所から吉野川を渡り、南へ約9.3キロ。四国山地の麓に位置するのが第11番札所・藤井寺(ふじいでら)です。

ここは四国八十八ヶ所霊場の中で、最初の「難所」への入り口として知られています。寺の裏手からは、標高約800メートルまで登る険しい山道「遍路ころがし」が続いており、次の第12番札所へと向かう巡礼者たちが、ここで呼吸を整え、心を決める場所でもあります。
弘法大師ゆかりの美しい藤の花と、静寂に包まれた境内の魅力をご紹介します。

山号・院号 金剛山 一乗院(こんごうざん いちじょういん)
宗派 臨済宗妙心寺派
御本尊 薬師如来(やくしにょらい)
開基 弘法大師(空海)
御真言 オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ
御詠歌 色(いろ)も香(か)も 無常(むじょう)の世(よ)に さかふ藤(ふじ) こころの月(つき)を 磨(みが)きこそすれ (意味:色も香りも、やがては消えゆく無常の世に逆らって咲く藤の花のように、変わることのない心の月(悟り)を磨くべきである)

11番札所・藤井寺の歴史と縁起

藤井寺の開創は弘仁6年(815年)。弘法大師がこの地を訪れた際、42歳の厄年にあたる自身の厄除けと、地域の安寧を願って薬師如来像を刻み、堂宇を建立したのが始まりです。

その際、大師はお堂の前に「五色の藤」を植えたと伝えられています。この藤が美しく咲き誇ったことから「藤井寺」と呼ばれるようになりました。
もとは真言宗の寺院でしたが、天正の兵火で焼失後、江戸時代に阿波藩主によって再興された際に「臨済宗(禅宗)」に改められました。四国霊場の中では数少ない禅宗寺院であり、境内には凛とした空気が漂っています。

境内の見どころ:藤の花と天井の龍

難所を前にした静かなお寺ですが、季節の彩りと芸術的な見どころがあります。

1. 弘法大師ゆかりの「五色の藤」

境内の藤棚には、弘法大師が植えたと伝わる五色の藤(白、紫、青紫、薄紅、紅)の子孫が今も大切に育てられています。
毎年4月下旬から5月上旬にかけて見頃を迎え、その優雅な姿と甘い香りは、これから厳しい山道へ挑むお遍路さんを優しく励ましてくれます。

2. 本堂天井の「雲龍図」

本堂にお参りする際は、ぜひ天井を見上げてみてください。そこには畳約30畳分もの大きさがある巨大な「雲龍図」が描かれています。
1977年に地元の画家によって描かれたこの龍は、今にも動き出しそうなほどの迫力があり、見る者を圧倒します。禅宗寺院らしい力強さを感じられるアートスポットです。

3. 難所「遍路ころがし」への入り口

本堂の脇には、次の第12番札所・焼山寺へと続く登山道の入り口があります。ここから先は「遍路ころがし」と呼ばれる、全長約13キロ、高低差の激しい山道が続きます。
また、本堂の裏手には、この山道を登ることが難しい人のために、四国八十八ヶ所の御本尊を石仏として祀った「ミニ八十八ヶ所」の巡礼路も整備されています。

御朱印・納経について

参拝後は納経所へ。藤井寺の御朱印には、薬師如来を表す梵字(バイ)と「本尊 薬師如来」の文字が記されます。
禅宗のお寺らしい、シンプルで力強い筆致の御朱印をいただき、いざ最大の難所へ向けて心を整えましょう。

アクセス・駐車場・参拝案内

  • 所在地: 徳島県吉野川市鴨島町飯尾1525
  • 第10番からの距離: 第10番札所・切幡寺から約9.3km。徒歩で約2時間半、車で約20分。吉野川の中洲(善入寺島)を経由するルートは景色が良くおすすめです。
  • 駐車場: あり(有料:普通車300円)。山門前に整備された駐車場があります。
  • 次の札所へ: 第12番札所「焼山寺」までは約12.9km。ここが最初の試練です。徒歩なら約5〜6時間の本格的な登山、車でも約1時間の山道ドライブとなります。

まとめ:難所を前に、美しい藤で心を洗う

第11番札所・藤井寺は、平地のお寺から山岳霊場へと切り替わる重要なポイントです。 美しい藤の花や迫力の雲龍図に触れ、弘法大師の厄除けパワーをいただいて、万全の準備で次の「焼山寺道」へと踏み出してください。