第11番札所から続く険しい山道を登りきった先、標高938メートルの山上に位置するのが第12番札所・焼山寺(しょうさんじ)です。
四国八十八ヶ所巡礼において、ここは最初の「難所(遍路ころがし)」として知られます。かつて弘法大師が大蛇と戦い、山全体が炎に包まれたという伝説が残るこの地は、まさに修行の場。
樹齢数百年の杉の巨木が立ち並ぶ参道や、雲海に浮かぶような境内の神秘的な雰囲気は、苦難を乗り越えてたどり着いた巡礼者だけが味わえる特別な感動を与えてくれます。
| 山号・院号 | 摩盧山 正寿院(まろざん しょうじゅいん) |
|---|---|
| 宗派 | 高野山真言宗 |
| 御本尊 | 虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | ノウボウ・アキャシャ・キャラバヤ・オン・アリ・キャマリ・ボリ・ソワカ |
| 御詠歌 | 後(のち)の世(よ)を 思へばまゐれ 焼山寺(しょうさんじ) 死出(しで)の旅路(たびじ)の 難所(なんしょ)ありとも (意味:来世の安楽を願うなら、どんなに険しい死出の旅路のような難所があっても、焼山寺へ参りなさい) |
12番札所・焼山寺の歴史と縁起
焼山寺の開創には、弘法大師の壮絶な伝説が残されています。
平安時代、大師がこの地を訪れた際、山全体が燃え盛るような炎に包まれていました。それは、神通力を持った大蛇が火を吐いていたためでした。大師は摩盧(水輪)の印を結んで進み、岩窟に潜む大蛇を「虚空蔵菩薩」の力で封じ込め、自ら石仏を刻んで安置しました。
この「山が焼けていた」という伝説が、「焼山寺」という名の由来です。現在も大蛇を封じ込めた岩窟が奥の院に残されており、強力なパワースポットとして知られています。
境内の見どころ:巨木と伝説の霊域
標高が高く、深い山の中にある境内は、下界とは異なる荘厳な空気に満ちています。
1. 最初の難所「遍路ころがし」
藤井寺から焼山寺へ至る約12.9キロの山道は、「遍路ころがし」と呼ばれます。「お遍路さんが転げ落ちるほど急で険しい」という意味で、歩き遍路最大の難所の一つです。
しかし、苦しい登り坂の途中には、大師が休憩したとされる「杖杉庵」や、美しい眺望スポットがあり、自然と一体になりながら自分自身と向き合う、貴重な時間を過ごすことができます。
2. 天然記念物「焼山寺の杉並木」
山門をくぐると、樹齢数百年、高さ30メートルを超える巨大な杉の並木が参道を覆うように続いています。県の天然記念物にも指定されているこの杉並木は、まさに圧巻。
巨木の間から差し込む木漏れ日と、静寂に包まれた空気は、ここが神聖な場所であることを肌で感じさせてくれます。
3. 大蛇を封じた「奥の院」への道
本堂の横から山道をさらに1キロほど登ると、弘法大師が大蛇を封じ込めたとされる「奥の院」があります。
ここからの眺めは絶景で、天気が良ければ徳島市内や淡路島、さらには和歌山県の山々まで見渡すことができます。体力に余裕のある方は、ぜひ足を伸ばしてみてください。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。焼山寺の御朱印には、虚空蔵菩薩を表す梵字(タラーク)と「本尊 虚空蔵菩薩」の文字が記されます。
難所を越え、たどり着いた達成感とともにいただく御朱印は、これまでの苦労を喜びに変えてくれる、特別な一枚となるでしょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 徳島県名西郡神山町下分字地中318
- 第11番からの距離: 第11番札所・藤井寺から約12.9km。徒歩で約5〜6時間(健脚向き)。車の場合は約40km(約1時間)かかります。
- 駐車場: あり(有料)。山門前に整備されていますが、そこに至るまでの車道は道幅が狭く、カーブの多い山道が続くため、運転には十分な注意が必要です。
- 次の札所へ: 第13番札所「大日寺」までは約27km。ここから徳島市内方面へと下っていきます。
まとめ:難所を越えた先に待つ感動
第12番札所・焼山寺は、お遍路の厳しさと素晴らしさの両方を教えてくれる場所です。 苦しい山道の果てに出会う巨木の森や、静かな本堂での祈りは、一生忘れられない思い出になるはずです。ここを乗り越えれば、お遍路として一回り大きく成長できることでしょう。
