最大の難所・焼山寺の山を下り、鮎喰川(あくいがわ)を渡って徳島市内に入ると、穏やかな平地の寺院が現れます。第13番札所・大日寺(だいにちじ)です。
第4番札所と同じ「大日寺」という名前ですが、こちらは古くから阿波国の一宮(いちのみや)である「一宮神社」の別当寺(神社を管理する寺)として栄えてきました。
道路を挟んで神社の向かいに位置するこのお寺は、神仏習合の歴史を色濃く残す場所。厳しい山道を乗り越えた巡礼者を、美しい「しあわせ観音」が優しく出迎えてくれます。
| 山号・院号 | 大栗山 花蔵院(おおぐりざん けぞういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗大覚寺派 |
| 御本尊 | 十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ |
| 御詠歌 | 阿波(あわ)の国(くに) 一宮(いちのみや)の となりのみ堂(どう) 塔(とう)のもとこそ 仏(ほとけ)なりけれ (意味:阿波の国の一宮神社の隣にあるこの御堂こそ、塔のもとに仏様がいらっしゃるありがたい場所である) |
13番札所・大日寺の歴史と縁起
大日寺の歴史は、弘法大師がこの森で修行を行っていた際、紫色の雲がたなびくのを見て、十一面観音菩薩を感得したことに始まります。大師は一刀三礼してその姿を刻み、本尊として安置しました。
この地は古くから「大栗山(おおぐりやま)」と呼ばれ、五穀豊穣の神様が鎮まる場所とされていました。かつては大日寺が一宮神社の管理を担っており、お遍路さんもまずは神社に参拝してから、お寺で納経をする習わしがありました。
明治時代の神仏分離令によって神社と分離されましたが、現在も道路を挟んで向かい合い、深い関わりを持ち続けています。
境内の見どころ:しあわせ観音と神仏の絆
難所を越えてたどり着いた大日寺は、こぢんまりとしながらも、ホッと心が緩むような温かさがあります。
1. 優しく微笑む「しあわせ観音」
境内の中央、木々の緑に映えるように立っているのが「しあわせ観音」です。
彩色された美しいそのお姿は、右手に錫杖を持ち、左手で子供を抱いた優しい表情をされています。その名の通り、手を合わせる人々に幸せをもたらすとされ、多くの参拝者がその穏やかな微笑みに癒やされています。
2. 向かい合う「一宮神社」
大日寺のすぐ向かい側には、阿波国一宮である「一宮神社」が鎮座しています。かつてはここが札所の一部(元札所)であり、今も多くの巡礼者がお寺と合わせて神社にも参拝します。
神社の本殿や拝殿は国の重要文化財に指定されており、歴史的な建築美も見どころの一つです。
3. 弘法大師の「爪彫り弥陀」
境内にある脇堂には、弘法大師が自分の爪で岩に彫ったと伝えられる「爪彫り弥陀(つめぼりみだ)」と呼ばれる石仏の一部が安置されていると言われています(現在は秘仏や伝承として語られることが多いですが、その信仰は残っています)。
大師の伝説が息づく境内を、静かに散策してみてください。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。大日寺の御朱印には、十一面観音を表す梵字(キャ)と「本尊 十一面観音」の文字が記されます。
かつて神社と一体であった歴史を感じながら、穏やかな気持ちで御朱印をいただきましょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 徳島県徳島市一宮町西丁263
- 第12番からの距離: 第12番札所・焼山寺から約27km。焼山寺山を下り、鮎喰川沿いを進む長い道のりです。車なら約1時間、徒歩だと約7〜8時間の健脚コースとなります。
- 駐車場: あり(無料)。山門前に普通車用の駐車場があります。
- 次の札所へ: 第14番札所「常楽寺」までは約2.3km。徒歩で約40分、車で約5分。ここからは平坦な道で、次の札所までスムーズに移動できます。
まとめ:難所を越え、一宮の神仏に守られて
第13番札所・大日寺は、焼山寺という最大の難所を乗り越えた巡礼者を、優しく迎え入れてくれる場所です。 しあわせ観音の微笑みに癒やされ、向かいの一宮神社にも挨拶をする。神と仏が共存するこの地で、旅の無事を感謝し、次の道中への活力を養ってください。
