別格12番から約20キロ。八十八ヶ所第65番・三角寺の奥之院とも称される、山深い聖地に別格13番・仙龍寺(せんりゅうじ)があります。
通称「奥の院」と呼ばれるこのお寺の最大の特徴は、その建築様式です。
急な渓谷の岩肌にへばりつくように、滝と鍾乳洞を覆って建てられた「懸造り(かけづくり)」の本堂は、見る者を圧倒する迫力。弘法大師が若き日に修行をした霊気が、今も漂う神秘的な場所です。
| 山号・院号 | 金光山 遍照院(きんこうざん へんじょういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗大覚寺派 |
| 御本尊 | 弘法大師(こうぼうだいし) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | 南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう) |
| 御詠歌 | 極楽(ごくらく)を 独(ひと)り楽(たの)しむ ものならば 仙龍寺(やま)にこもって 修行(しゅぎょう)せましを (意味:もし極楽浄土の境地を一人で楽しもうとするならば、この仙龍寺の山に籠もって修行をするのがよいだろう) |
別格13番・仙龍寺の歴史と縁起
延暦10年(791年)、当時18歳だった弘法大師がこの山に入り、「求聞持法(ぐもんじほう)」という記憶力を高める厳しい修行を行いました。
大師は山中で一人の仙人に出会い、この地が霊地であることを教わります。
修行を終えた大師は、自らの姿を木に刻んで安置しました。これが現在も御本尊として祀られている「開運厄除大師像」です。
この地は古くから「金光山」と呼ばれ、山全体が薄い黄金色に輝くような神々しい雰囲気を持っていたと伝えられています。
境内の見どころ:建築美と清流の音
コンクリート造りの庫裏と一体化した木造の本堂は、他では見られない独特の構造をしています。
1. 圧巻の「懸造り(かけづくり)」
本堂は、清水寺の舞台のような柱で支えられた「懸造り」と呼ばれる様式で、渓谷をまたぐように建てられています。
参拝者は靴を脱いで本堂(庫裏)に入り、廊下を通って奥の大師堂へと向かいます。建物の下を清流(不動の滝)が流れており、堂内には常に水の音が響き渡り、心が洗われるようです。
2. 鍾乳洞と一体化した「大師堂」
本堂の最奥にある大師堂は、天然の鍾乳洞を利用して作られています。
弘法大師作と伝わる御本尊は、この洞窟の中に祀られています。薄暗い堂内はロウソクの灯りが揺らめき、まさに修行の場といった厳粛な空気に包まれています。
3. 「御清浄(おせじょう)の滝」
境内へ向かう途中には、かつて大師が身を清めたとされる「御清浄の滝」があります。
水量豊かな滝が岩肌を流れ落ちる様は美しく、夏場でもひんやりとした冷気に満ちています。
御朱印・納経について
参拝後は、本堂内にある納経所へ。別格霊場の御朱印をいただきます。
御本尊が弘法大師であるため、御影(おみえ)も大師のお姿です。納経所では、修行中のお大師様を描いた貴重な授与品も手に入ります。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県四国中央市新宮町馬立1200
- 位置関係: 八十八ヶ所第65番・三角寺から山奥へ入った場所にあります。徳島県との県境に近く、アクセスルートは険しい山道です。
- 別格12番からの距離: 別格12番・延命寺から車で約40分。国道319号線を経由しますが、道幅が狭い区間(離合困難)があるため、運転には十分な注意が必要です。
- 駐車場: あり(無料)。本堂の少し手前に駐車場があります。
- 次の別格札所へ: 別格第14番「椿堂(つばきどう)」までは約5km。山道を下り、同じく国道319号線沿いにあります。比較的近いです。
まとめ:滝音響く、修行の原風景
別格13番・仙龍寺は、若き日の弘法大師の情熱と、自然と一体化した祈りの形を体感できる場所です。 建物の下を流れる水の音に耳を傾け、静寂な堂内で手を合わせれば、日々の喧騒を忘れて心静かな時間を過ごすことができるでしょう。