第20番札所からさらに山深く入った場所、標高600メートルの太龍寺山の山頂付近に広がるのが第21番札所・太龍寺(たいりゅうじ)です。
古来より「西の高野山」と称されるこの寺は、樹齢数百年の巨杉が立ち並ぶ広大な境内を持ち、四国霊場屈指の荘厳な雰囲気を漂わせています。若き日の弘法大師が厳しい修行を行った場所としても有名です。
現在は西日本最長のロープウェイを利用して参拝することができ、眼下に広がる絶景と、天空の古刹の神秘的な世界をご案内します。
| 山号・院号 | 舎心山 常住院(しゃしんざん じょうじゅういん) |
|---|---|
| 宗派 | 高野山真言宗 |
| 御本尊 | 虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ) |
| 開基 | 桓武天皇 |
| 御真言 | ノウボウ・アキャシャ・キャラバヤ・オン・アリ・キャマリ・ボリ・ソワカ |
| 御詠歌 | 太龍(たいりゅう)の 常に住むぞや 舎心山(しゃしんざん) 怖(おそ)るる心(こころ) なきぞ尊(とうと)き (意味:太龍嶽に心がとどまるこの山で修行すれば、恐れる心もなくなり、尊い境地に至るだろう) |
21番札所・太龍寺の歴史と縁起
太龍寺の歴史は、若き日の弘法大師(空海)の修行時代に遡ります。
延暦12年(793年)、当時19歳だった大師は、この太龍ヶ嶽(たいりゅうがたけ)の岩場に座し、1日1万遍の真言を100日間唱え続ける「虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)」という極めて厳しい修行を行いました。
この修行により、大師は驚異的な記憶力と智慧を得たとされています。後に桓武天皇の勅願によって伽藍が建立され、現在に至るまで「修行の聖地」として多くの信仰を集めています。
その境内の広さと風格は、まさに「西の高野」の名にふさわしいものです。
境内の見どころ:天空の絶景と修行の岩
ロープウェイを降りると、そこは別世界。澄んだ空気の中に点在する見どころをご紹介します。
1. 絶景の「太龍寺ロープウェイ」
多くの参拝者が利用するのが、西日本最長(全長2,775m)を誇る太龍寺ロープウェイです。
山麓駅から山頂駅まで約10分の空中散歩では、眼下に那賀川の清流や徳島の山並みを一望でき、まるで龍の背に乗って空を飛んでいるような気分を味わえます。お遍路の難所を楽々と越える文明の利器でもあります。
2. 大師修行の地「舎心ヶ嶽(しゃしんがたけ)」
本堂からさらに約600メートルほど歩いた岩場の上に、東を向いて座る弘法大師の銅像があります。
こここそが、大師が19歳の時に命がけで修行を行った「舎心ヶ嶽」です。断崖絶壁の上に座る大師像が見つめる先には、室戸岬と太平洋が広がっています。強力なパワースポットとしても知られています。
3. 荘厳な「本堂」と「杉並木」
境内には樹齢数百年とも言われる巨大な杉や檜が立ち並び、昼間でも薄暗いほどの静寂に包まれています。
その奥に鎮座する本堂は、安政年間に再建された重厚な建物。御本尊の虚空蔵菩薩は、無限の智慧と福徳を授けてくれる仏様です。深呼吸をして、山の霊気を全身で感じてみてください。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。太龍寺の御朱印には、虚空蔵菩薩を表す梵字(タラーク)と「本尊 虚空蔵菩薩」の文字が記されます。
若き日の空海が修行に打ち込んだ地でいただく御朱印は、何かに挑戦する勇気を与えてくれるでしょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 徳島県阿波市(※住所は阿南市加茂町龍山2)
- 第20番からの距離: 第20番札所・鶴林寺から約6.7km。直線距離は近いですが、一度山を下りて再び登る「遍路ころがし」の難所です。
- アクセス方法:
- 車・バス遍路: 麓にある「太龍寺ロープウェイ山麓駅(道の駅鷲の里)」からロープウェイを利用するのが一般的です。
- 歩き遍路: 鶴林寺から那賀川へ下り、そこから再び険しい山道を登ります(健脚向け)。
- 駐車場: 道の駅鷲の里に無料の大駐車場があります。
- 次の札所へ: 第22番札所「平等寺」までは約10.9km。ロープウェイで下山してから向かいます。
まとめ:西の高野で空海の原点に触れる
第21番札所・太龍寺は、弘法大師空海の原点とも言える修行の地です。 ロープウェイからの絶景を楽しみつつ、境内に一歩足を踏み入れれば、そこは厳かな祈りの空間。大自然と一体になれる天空の古刹で、心を洗うひとときをお過ごしください。
