第24番札所から室戸岬の西海岸を北上すること約6.5キロ。漁師町として栄える室戸津(むろとつ)港を見下ろす小高い丘に、第25番札所・津照寺(しんしょうじ)があります。
地元の人々からは「津寺(つでら)」の愛称で親しまれ、古くから海の安全を守る寺として信仰されてきました。参道入り口から一気に登る急な石段は少し大変ですが、登り切った境内からは太平洋と港町を一望する素晴らしい景色が広がっています。
船人たちを救った「舵取り地蔵」の伝説が残る、潮風香る霊場をご案内します。
| 山号・院号 | 宝珠山 真言院(ほうじゅざん しんごんいん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗豊山派 |
| 御本尊 | 延命地蔵菩薩(えんめいじぞうぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・カカカ・ビ・サンマエイ・ソワカ |
| 御詠歌 | 法(のり)の船(ふね) 入(い)るか出(で)るか この津(つ)寺(てら) 迷(まよ)う我(わ)が身(み)を 導(みちび)き給(たま)え (意味:法の船が出入りするこの津寺のお地蔵様よ、迷える我が身をどうぞお導きください) |
25番札所・津照寺の歴史と縁起
大同2年(807年)、弘法大師がこの地を巡錫した際、小高い山が地蔵菩薩の持つ宝珠(ほうじゅ)の形に似ていることに感銘を受け、自ら延命地蔵菩薩を刻んで本尊とし、開基しました。
このお地蔵様には不思議な伝説があります。ある時、土佐藩主・山内一豊公が海上で激しい暴風雨に遭い、船が遭難しかけました。その時、どこからともなく一人の僧が現れて船の舵を取り、無事に室戸の港へ導いたといいます。
港に着いた後、僧の姿は消えましたが、津照寺の本尊にお参りすると、お地蔵様の体が濡れていたそうです。以来、このお地蔵様は「舵取り地蔵」と呼ばれ、海上の安全を守る仏様として厚く信仰されるようになりました。
境内の見どころ:港の絶景と赤い門
漁港のすぐそばにあるため、境内には常に潮の香りが漂い、独特の活気が感じられます。
1. 伝説の「舵取り地蔵」
本堂に祀られている御本尊・延命地蔵菩薩は「舵取り地蔵」として知られ、海上安全はもちろん、人生の荒波においても正しい方向へ導いてくれるご利益があるとされています。
また、火事の際に自ら「火事だ!」と声を上げて僧侶たちに知らせたという伝説もあり、「火事告げ地蔵」とも呼ばれる霊験あらたかなお地蔵様です。
2. 125段の急な石段と「鐘楼門」
通りに面した入り口から境内へ上がるには、コンクリート造りの急な石段を125段登らなければなりません。
その途中には、朱色と白のコントラストが美しい竜宮城のような「鐘楼門」が建っています。ここをくぐりながら登る参道は、まさに聖域へと昇っていくような高揚感があります。
3. 本堂からの「港の絶景」
石段を登り切った本堂前からは、眼下に室戸津港と広大な太平洋を一望できます。
漁船が行き交う活気ある港の風景と、どこまでも続く水平線。心地よい海風に吹かれながらこの景色を眺めれば、石段登りの疲れも心地よい達成感へと変わるでしょう。
御朱印・納経について
参拝後は、石段の下にある納経所へ。津照寺の御朱印には、地蔵菩薩を表す梵字(カ)と「本尊 舵取地蔵尊」の文字が記されます。
人生の舵取りを願っていただく御朱印は、迷った時の道しるべとなるはずです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 高知県室戸市室戸津2652-イ
- 第24番からの距離: 第24番札所・最御崎寺から約6.5km。室戸岬の西側を北上するルートで、車で約10分、徒歩で約1時間半です。
- 駐車場: あり(無料)。漁港の近く(参道入り口付近)に参拝者用の駐車場があります。
- 次の札所へ: 第26番札所「金剛頂寺」までは約3.8km。行当岬(ぎょうどみさき)の山頂へ向かうため、再び登り坂となります。
まとめ:人生の舵取りを祈る海の寺
第25番札所・津照寺は、室戸の海と共に生きる人々の信仰が息づく場所です。 港を見下ろす高台で舵取り地蔵様に手を合わせ、これからの旅、そして人生が良い方向へ進むよう祈願してみてください。