第26番札所から海岸線を北西へ約27.5キロ。太平洋を見下ろす標高430メートルの山上に、第27番札所・神峯寺(こうのみねじ)があります。
ここは古くから「真っ縦(まったて)」と呼ばれる急勾配の参道で知られる難所であり、第24番以降の「土佐の関所」として、罪深い者は登ることができないと恐れられてきました。
しかし、その厳しい道のりの先には、手入れの行き届いた美しい日本庭園と、病気平癒の霊水「神峯の水」が湧き出る、清らかな祈りの空間が待っています。
| 山号・院号 | 竹林山 地蔵院(ちくりんざん じぞういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗豊山派 |
| 御本尊 | 十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 行基菩薩 |
| 御真言 | オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ |
| 御詠歌 | みほとけの 恵(めぐ)みの心(こころ) 神峯(こうのみね) 山(やま)も誓(ちか)いも 高(たか)き水音(みずおと) (意味:御仏の慈悲深い心は、この神峯山のように高く、誓いもまた滝の水音のように力強く響き渡っている) |
27番札所・神峯寺の歴史と縁起
神峯寺の歴史は神功皇后の時代にまで遡り、古くは天照大神を祀る神社としての性格も持っていました。天平2年(730年)、行基菩薩が勅命を受けて十一面観音を刻んで安置し、神仏習合の霊場として開基しました。
その後、弘法大師がこの地で「仏の光で世の中を照らす」という祈願を行い、伽藍を整備しました。幕末から明治にかけては、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の母が、息子の出世を願って片道20キロの道のりを21日間通い続けた(日参した)ことでも有名です。
弥太郎の大成は、母の祈りと神峯寺のご利益によるものと伝えられ、立身出世の寺としても信仰されています。
境内の見どころ:難所の先の美しき庭と霊水
苦しい坂道を登り終えた巡礼者を待っているのは、手入れされた美しい自然と、心身を癒やす霊水です。
1. 土佐の難所「真っ縦(まったて)」
麓から境内へ続く参道は、かつて「真っ縦」と呼ばれるほどの急坂でした。現在は車道が整備されていますが、それでも急カーブと急勾配が続く難所であることに変わりありません。
歩き遍路の方にとってはまさに心臓破りの坂ですが、登り切った時の達成感と、眼下に広がる太平洋の眺めは格別です。
2. 病気平癒の「神峯の水」
境内の岩窟から湧き出る「神峯の水」は、病気平癒に霊験あらたかな霊水として知られています。
その昔、病に苦しむ人々がこの水を飲んで回復したという伝説が多く残されており、現在も遠方から水を求めて訪れる人が絶えません。冷たく澄んだ水で喉を潤せば、体の中から浄化されるような気分になります。
3. 四季を彩る「日本庭園」
神峯寺の境内は、仏教寺院というよりも美しい日本庭園のような趣があります。
春の桜、初夏のツツジ、秋の紅葉と、四季折々の花々が岩組みの間を彩り、訪れる人の目を楽しませてくれます。厳しい修行の道場でありながら、どこか優雅で安らぎのある空間が広がっています。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。神峯寺の御朱印には、十一面観音を表す梵字(キャ)と「本尊 十一面観音」の文字が記されます。
「土佐の関所」を無事に通過できた証となる御朱印です。ここまで来られた健康と健脚に感謝していただきましょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 高知県安芸郡安田町唐浜2594
- 第26番からの距離: 第26番札所・金剛頂寺から約27.5km。海岸線を北上し、最後に山道に入ります。車で約50分、徒歩だと約7〜8時間の長丁場です。
- 駐車場: あり(無料)。山門の近くまで車で上がることができますが、非常に急な坂道(縦断勾配がきつい)が続くため、運転には十分な注意と馬力のある車が推奨されます。
- 次の札所へ: 第28番札所「大日寺」までは約38km。ここから高知市内方面へ向けて、海岸沿いの爽快なドライブ・ウォーキングが続きます。
まとめ:母の祈りが通じた出世の寺
第27番札所・神峯寺は、急な山道の厳しさと、美しい庭園の優しさが同居するお寺です。 岩崎弥太郎の母が息子を想って通い詰めたように、大切な人の幸せや健康を祈るには最適な場所。霊水をいただき、心を込めて手を合わせてみてください。