第29番札所から約7キロ。高知市の北東部、一宮(いっく)と呼ばれる地区に、第30番札所・善楽寺(ぜんらくじ)があります。
すぐ隣には、土佐国の一宮(地域で最も格式高い神社)である「土佐神社」が鎮座しており、善楽寺は古くからその別当寺(神社を管理する寺)として栄えてきました。
明治時代の廃仏毀釈によって一度は廃寺となる苦難を経験しましたが、昭和に入り見事に復興。「首から上の病」を癒やすお地蔵様など、ユニークなご利益で多くの参拝者を集めています。
| 山号・院号 | 百々山 東明院(どどざん とうみょういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗豊山派 |
| 御本尊 | 阿弥陀如来(あみだにょらい) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン |
| 御詠歌 | 人(ひと)多(おお)く 立(た)ち寄(よ)って見(み)れば 善楽寺(ぜんらくじ) 瑠璃(るり)の浮(う)き木(ぎ)を おさむるものを (意味:多くの人が立ち寄って信仰する善楽寺には、光り輝く瑠璃の霊木(阿弥陀如来)が納められていることだよ) |
30番札所・善楽寺の歴史と縁起
大同5年(810年)、弘法大師がこの地を訪れた際、土佐一ノ宮(現在の土佐神社)の別当寺として善楽寺を開基しました。大師は「霊山であるこの地は、神と仏が共に鎮まるべき場所である」と悟り、阿弥陀如来像を刻んで本尊としました。
以来、神仏習合の霊場として繁栄しましたが、明治初期の「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」の嵐により、善楽寺は廃寺となってしまいます。御本尊は近くの別の寺に避難させられ、一時期は30番札所が2つ存在する(善楽寺と安楽寺)という混乱の時代もありました。
しかし、昭和5年(1930年)に埼玉県から来た僧侶によって再興され、平成6年には新しい本堂が完成。現在は正式な第30番札所として、静かな佇まいを取り戻しています。
境内の見どころ:癒やしの地蔵と神社の杜
市街地にありながら、隣接する神社の森のおかげで境内は緑豊かで静寂です。特に悩みを持つ方に優しい仏様がいらっしゃいます。
1. 首から上の病を治す「梅見地蔵」
大師堂の横にある「梅見地蔵(うめみじぞう)」は、首から上の病気(頭痛、眼病、耳の病気、うつ、悩み事など)にご利益があるとされ、大変人気があります。
昔、この場所で梅の木を見ていた僧侶が首の病気で倒れ、お地蔵様に祈願して治ったという伝説からこの名が付きました。合格祈願に訪れる受験生の姿も多く見られます。
2. 子宝・安産祈願の「子安地蔵堂」
境内には、弘法大師が難産に苦しむ妊婦のために祈祷したという伝説にちなんだ「子安地蔵堂」があります。
ここには「子安地蔵」が祀られており、安産や子宝、子供の健やかな成長を願う人々が、フェルトで作った小さなよだれかけや帽子を奉納しています。温かい祈りに包まれた場所です。
3. 隣接する「土佐神社(しなね様)」
善楽寺のすぐ隣には、重要文化財の社殿を持つ「土佐神社」があります。地元では「しなね様」と呼ばれ親しまれています。
かつては神仏習合の聖地として一体だった場所。お寺の参拝と合わせて神社にもお参りし、土佐の歴史の深さを感じてみてはいかがでしょうか。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。善楽寺の御朱印には、阿弥陀如来を表す梵字(キリーク)と「本尊 阿弥陀如来」の文字が記されます。
一度は失われかけながらも、人々の信仰心によって蘇ったお寺。その復興のエネルギーを感じながら御朱印をいただきましょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 高知県高知市一宮しなね2丁目23-11
- 第29番からの距離: 第29番札所・国分寺から約7km。車で約15分、徒歩で約1時間半。高知市街地へ向かう平坦な道です。
- 駐車場: あり(無料)。山門前に整備された駐車場があります。
- 次の札所へ: 第31番札所「竹林寺」までは約6.3km。車で約20分、徒歩で約1時間半。高知市内の名勝、五台山(ごだいさん)の山頂を目指します。
まとめ:苦難を越えて蘇った祈りの場
第30番札所・善楽寺は、歴史の荒波に揉まれながらも、人々の「守りたい」という想いで復興したお寺です。 梅見地蔵様に頭の悩みを預け、隣の土佐神社で柏手を打つ。神と仏に見守られながら、高知の旅路を安らかに進めてください。