第43番札所から約67キロ。標高400〜800メートルの山々が連なる「久万高原(くまこうげん)」の深い森の中に、第44番札所・大寶寺(だいほうじ)があります。
四国八十八ヶ所のちょうど半分にあたるため、「中札所(なかふだしょ)」とも呼ばれ、旅の折り返し地点となる重要な場所です。
樹齢数百年を超える杉や檜の古木が立ち並ぶ境内は、神秘的で幽玄な雰囲気に満ちています。長い道のりを越えてたどり着いた巡礼者を優しく包み込む、癒やしの古刹をご案内します。
| 山号・院号 | 菅生山 大覚院(すごうざん だいかくいん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗豊山派 |
| 御本尊 | 十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 明神右京、隼人 |
| 御真言 | オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ |
| 御詠歌 | 今の世は 大悲(だいひ)のめぐみ 菅生山(すごうざん) ついには弥陀(みだ)の 誓(ちか)いをぞまつ (意味:現世では観音様の大いなる慈悲の恵みを受け、死後は阿弥陀如来の誓いによって極楽へ行けることを待とう) |
44番札所・大寶寺の歴史と縁起
大宝元年(701年)、明神右京・隼人という兄弟の狩人が、山中で光り輝く場所を見つけました。近づいてみると、そこには一本の老杉があり、その中に黄金の十一面観音像が安置されていました。
兄弟はこの観音様を深く信仰し、草庵を結んで祀ったのが始まりとされています。時の文武天皇(もんむてんのう)もこの話を聞き、勅願所として寺を建立し、年号をとって「大寶寺」と名付けました。
その後、弘法大師もこの地を訪れ、密教を修法。山号を「菅生山(すごうざん)」と定め、四国霊場の中札所として定めました。古くから多くの修行僧や巡礼者が訪れ、心を整える場所として大切にされてきました。
境内の見どころ:森の静寂と観音様の伝説
深い森に囲まれた境内は、一歩足を踏み入れるだけで空気が変わるような神聖さが漂っています。
1. 老杉と「杉本観音」の伝説
大寶寺の御本尊は、発見の経緯から「杉本観音」と呼ばれ親しまれています。
残念ながら明治時代の火災で本堂や多くの宝物が焼失してしまいましたが、御本尊だけは自ら奥の院の杉の木に飛び移り、難を逃れたという伝説が残っています。
境内には今も立派な杉や檜が立ち並び、自然の中に仏様が宿っているような気配を感じさせます。
2. 旅の節目「中札所」
44番という数字は、88ヶ所のちょうど半分。「ここが折り返し地点」という感慨に浸れる場所です。
ここまで無事に巡ってこれたことへの感謝と、後半の旅の安全を祈願して、新たな気持ちで草鞋(わらじ)を履き直す、精神的なリセットポイントでもあります。
3. 幽玄な雰囲気の参道
駐車場から本堂へ向かう参道は、昼間でも薄暗いほどの巨木に覆われています。
苔むした石垣や石段、そして静寂を破る鳥の声。俗世から離れた深山幽谷(しんざんゆうこく)の趣があり、歩くだけで心が洗われるような森林浴体験ができます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。大寶寺の御朱印には、十一面観音を表す梵字(キャ)と「本尊 十一面観音」の文字が記されます。
旅の半分を成し遂げた証として、ひときわ感慨深い御朱印となることでしょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県上浮穴郡久万高原町菅生2-1173
- 第43番からの距離: 第43番札所・明石寺から約67km。内子町や大洲市を経由し、山間部へと入る長い道のりです。車で約1時間半、徒歩だと約15〜16時間(2日程度)かかります。
- 駐車場: あり(無料)。境内入口に駐車場があります。
- 次の札所へ: 第45番札所「岩屋寺」までは約8.8km。同じ久万高原町内にありますが、奇岩がそびえるさらなる山岳霊場へと向かいます。
まとめ:折り返しの地で心を整える
第44番札所・大寶寺は、長い旅路の中間地点として、巡礼者を静かに迎え入れてくれるお寺です。 高原の澄んだ空気と巨木の森に癒やされ、後半の旅への活力を養ってください。ここから「菩提の道場」の旅もいよいよ深まっていきます。