第49番札所から約1.7キロ。松山平野を見下ろす丘陵地帯に、第50番札所・繁多寺(はんたじ)があります。
「繁多(はんた)」という名前は、人々の願い事が多く叶うように、また仏法が繁栄するようにとの願いが込められています。
境内からは松山城や瀬戸内海を一望でき、江戸時代には徳川将軍家の帰依を受けたことから、屋根瓦には「三つ葉葵」の御紋が見られます。一遍上人ゆかりの学問の地としても知られる、見晴らしの良い名刹をご案内します。
| 山号・院号 | 東山 瑠璃光院(ひがしやま るりこういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗豊山派 |
| 御本尊 | 薬師如来(やくしにょらい) |
| 開基 | 行基菩薩 |
| 御真言 | オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ |
| 御詠歌 | よろず世(よ)の 繁多(はんた)なりける 寺(てら)に入(い)り 仏(ほとけ)の御名(みな)を 唱(とな)うべし (意味:万世にわたって栄えるこの繁多寺に入り、心静かに仏の御名を唱えなさい) |
50番札所・繁多寺の歴史と縁起
天平勝宝年間(749〜757年)、孝謙天皇の勅願により行基菩薩が開基しました。本尊の薬師如来は行基の作と伝えられています。
その後、弘法大師が訪れて霊場として整備しました。鎌倉時代には、時宗の開祖・一遍上人(いっぺんしょうにん)が若き日にこの寺で修行し、仏教を学んだことでも知られています。
江戸時代に入ると、徳川家康の側室の念持仏(歓喜天)を祀った縁から、4代将軍・徳川家綱の篤い帰依を受けました。寺領の寄進などを受け、お寺の瓦などに徳川家の家紋である「三つ葉葵」の使用が許されました。
境内の見どころ:葵の御紋と絶景
高台にある境内は明るく開放的で、歴史の深さを感じさせるポイントが随所にあります。
1. 瓦に残る「三つ葉葵の御紋」
本堂や鐘楼などの屋根瓦をよく見てみてください。そこには徳川家の家紋である「三つ葉葵(みつばあおい)」が刻まれています。
これは、繁多寺が徳川将軍家と深い関わりを持っていた証拠であり、四国霊場の中でも格式の高さを物語っています。
2. 松山城と瀬戸内海の「眺望」
繁多寺は、松山城から見て東側の山手(東山)に位置しています。境内からは、松山市街地や松山城、さらに天気が良ければ遠く瀬戸内海まで見渡すことができます。
かつてのお遍路さんたちも、この景色を見て旅の疲れを癒やしたことでしょう。特に夕暮れ時の景色は美しいと評判です。
3. 商売繁盛の「聖天様(歓喜天)」
本堂の横にある聖天堂には、徳川家ゆかりの「大聖歓喜天(だいしょうかんきてん)」が祀られています。
「聖天様(しょうてんさま)」と呼ばれ、夫婦和合や商売繁盛、厄除けに強いご利益があるとされています。地元の人々からも厚く信仰されているパワースポットです。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。繁多寺の御朱印には、薬師如来を表す梵字(バイ)と「本尊 薬師如来」の文字が記されます。
「繁多」という縁起の良い名が入った御朱印は、多くの幸せや繁栄をもたらしてくれそうです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県松山市畑寺町32
- 第49番からの距離: 第49番札所・浄土寺から約1.7km。車で約5分、徒歩で約30分。非常に近い距離にあり、のどかな「遍路道」の風情が残るルートを楽しめます。
- 駐車場: あり(無料)。山門の近くまで車で上がれますが、お寺周辺の道は少し狭いので注意が必要です。
- 次の札所へ: 第51番札所「石手寺」までは約2.8km。車で約10分、徒歩で約45分。全国的にも有名な観光地でもある石手寺へ向かいます。
まとめ:高台から城下を望む格式の寺
第50番札所・繁多寺は、美しい景色と歴史の重みが調和したお寺です。 屋根の葵の御紋を探し、松山の町並みを見下ろしながら、かつてこの地で学んだ一遍上人の志に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。