第51番札所・石手寺から松山市街を西へ抜け、瀬戸内海に近い山手に第52番札所・太山寺(たいさんじ)があります。
長い参道を登った先に現れるのは、四国八十八ヶ所の中でも最大級の大きさを誇る壮大な本堂。この建物は、鎌倉時代の建築様式を今に伝える貴重な遺産として、「国宝」に指定されています。
嵐に遭った長者が観音様に救われ、その恩返しに一夜にして御堂を建てたという伝説が残る、歴史とロマンあふれる巨刹(きょさつ)をご案内します。
| 山号・院号 | 龍雲山 護持院(りゅううんざん ごじいん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗智山派 |
| 御本尊 | 十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 真野長者(まのちょうじゃ) |
| 御真言 | オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ |
| 御詠歌 | 太山(たいさん)へ 登(のぼ)れば汗(あせ)の 出(い)でけれど 後(のち)の世(よ)思(おも)えば 何(なに)の苦(く)もなし (意味:太山寺への坂道を登れば汗が出るほど大変だが、来世の安楽を思えば、これしきの苦労は何でもないことだ) |
52番札所・太山寺の歴史と縁起
太山寺の開創には、ある長者の伝説があります。
天平11年(739年)、豊後(現在の大分県)の真野長者(まのちょうじゃ)という裕福な商人が、船で大阪へ向かう途中、激しい嵐に遭いました。長者は「もし命を救ってくだされば、お礼に一宇の堂を建立します」と一心に観音様に祈りました。
すると、不思議な光に導かれて無事にこの地の海岸(高浜)に漂着しました。長者は約束通り、豊後から良質な木材を運び、一夜にして御堂を建てたと伝えられています。
その後、聖武天皇の勅願所となり、七堂伽藍を持つ大寺院として栄えました。
境内の見どころ:国宝の迫力と静寂
山門(仁王門)から本堂までは約600メートルの長い参道が続き、豊かな自然に囲まれた荘厳な空間が広がっています。
1. 圧巻のスケール「国宝・本堂」
太山寺最大の見どころは、なんといっても国宝に指定されている本堂です。
嘉元3年(1305年)に再建されたもので、木造建築としては愛媛県下最大級。釘を使わない伝統的な工法で建てられており、そのどっしりとした佇まいと美しい屋根の反りは、見る者を圧倒します。堂内には御本尊の十一面観音像(重要文化財)が安置されています。
2. 重要文化財「仁王門」
参道の入り口に建つ仁王門も、国の重要文化財に指定されています。
鎌倉時代の建築で、入母屋造りの重厚な門です。ここをくぐると、俗世から切り離された聖域へと入っていく感覚を味わえます。
3. 松山藩主ゆかりの地
太山寺は、松山城主・松平家の菩提寺の一つとしても知られており、境内からは松山市内や瀬戸内海を望むことができます。
春の桜、秋の紅葉など四季折々の自然も美しく、歴史的建造物とのコントラストが見事です。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。太山寺の御朱印には、十一面観音を表す梵字(キャ)と「本尊 十一面観音」の文字が記されます。
国宝の本堂にお参りした証は、旅の記念としても非常に価値のあるものです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県松山市太山寺町1730
- 第51番からの距離: 第51番札所・石手寺から約10.7km。車で約25分、徒歩で約2時間半。松山市街地を抜け、海の方角へ進みます。
- 駐車場: あり(有料・一部無料)。仁王門の近くに駐車場がありますが、そこから本堂までは坂道を10分ほど歩く必要があります。
- 次の札所へ: 第53番札所「円明寺」までは約2.5km。車で約5分、徒歩で約30〜40分。非常に近く、のどかな道を歩いて移動できます。
まとめ:嵐を鎮めた観音様の力
第52番札所・太山寺は、圧倒的なスケールの国宝建築と、海を越えた信仰の物語が息づくお寺です。 「後の世思えば何の苦もなし」という御詠歌を口ずさみながら坂道を登り、荘厳な本堂の前で手を合わせれば、大きな安心感に包まれることでしょう。