第54番札所から約3.4キロ。今治市の中心市街地に、第55番札所・南光坊(なんこうぼう)があります。
四国八十八ヶ所の中で、「〜寺」が付かず「坊」で終わるのは、ここ南光坊だけです。
その理由は、このお寺がもともと隣接する「別宮大山祇(べっくおおやまづみ)神社」を管理する8つの僧坊の一つだったことに由来します。神と仏が一体となっていた時代の歴史を色濃く残す、街中のオアシスのような霊場をご案内します。
| 山号・院号 | 別宮山 金剛院(べっくざん こんごういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗御室派 |
| 御本尊 | 大通智勝如来(だいつうちしょうにょらい) |
| 開基 | 行基菩薩 |
| 御真言 | オン・マカ・ジュナナ・ジビヤ・ソワカ |
| 御詠歌 | このところ 三島(みしま)に夢(ゆめ)の さめぬれば 別宮(べっく)とたれて 人(ひと)を救(すく)わん (意味:この場所は、大三島の大山祇神社から神様が夢のように現れ、別宮として垂迹(すいじゃく)し、人々を救う尊い場所である) |
55番札所・南光坊の歴史と縁起
今治の沖合にある大三島(おおみしま)には、日本総鎮守と呼ばれる「大山祇(おおやまづみ)神社」があります。かつては海を渡って参拝するのが困難だったため、推古天皇の時代に今治の地に「別宮(べっく:遥拝所)」が建てられました。
大宝3年(703年)、行基菩薩がこの別宮の法楽所(神様にお経を捧げる場所)として御本尊を祀ったのが寺の始まりです。弘法大師もこの地で修法を行いました。
かつては「南光坊」を含む8つの僧坊がありましたが、明治の神仏分離令や戦火によって南光坊だけが残り、そのまま第55番札所として引き継がれました。そのため「南光坊」という珍しい名前になっています。
境内の見どころ:珍しい御本尊と四天王
昭和20年の空襲で多くの堂宇を焼失しましたが、その後の復興により現在の立派な伽藍が整えられました。
1. 霊場唯一「大通智勝如来」
本堂に祀られている御本尊は「大通智勝如来(だいつうちしょうにょらい)」です。
この仏様を御本尊とするのは、四国八十八ヶ所の中で南光坊だけ。法華経に登場する非常に古い時代の仏様で、優れた智慧を持ち、悟りの世界へ導いてくれるとされています。大変珍しい仏様ですので、しっかりとお参りしておきましょう。
2. 迫力の「四天王門」
南光坊の山門は、仁王像ではなく「四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)」が四隅を守る「四天王門」になっています。
鮮やかな色彩と躍動感あふれる姿は迫力満点。邪気を払い、仏法を守護する四天王の間を通り抜けて境内へ入ります。
3. 隣接する「別宮大山祇神社」
道路を挟んで隣には、かつて一体であった「別宮大山祇神社」があります。
南光坊にお参りした後は、ぜひこちらの神社にも足を運んでみてください。神と仏が共に人々を守ってきた、日本の信仰の歴史を肌で感じることができます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。南光坊の御朱印には、大通智勝如来を表す非常に珍しい梵字と「本尊 大通智勝如来」の文字が記されます。
また、墨書きの右肩には、山号である「別宮山」の印が押されることもあり、神社との深いつながりを感じさせます。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県今治市常盤町3-1-3
- 第54番からの距離: 第54番札所・延命寺から約3.4km。車で約10分、徒歩で約50分。今治の市街地を歩く平坦なルートです。
- 駐車場: あり(無料)。境内に広い駐車場があり、大型バスも駐車可能です。アクセスは非常に便利です。
- 次の札所へ: 第56番札所「泰山寺」までは約3km。車で約10分、徒歩で約45分。今治市内を流れる蒼社川(そうじゃがわ)を渡って進みます。
まとめ:今治の街中に残る神仏の絆
第55番札所・南光坊は、名前も御本尊もユニークな、記憶に残るお寺です。 街中にありながら、古代からの神仏への祈りが静かに守られている場所。隣の神社と共に、今治の歴史を感じるひとときをお過ごしください。