第55番札所から約3キロ。今治市内を流れる蒼社川(そうじゃがわ)の近くに、第56番札所・泰山寺(たいさんじ)があります。
松山市にある第52番「太山寺」と同じ読み方ですが、こちらは「泰山寺」と書きます。かつて暴れ川だった蒼社川の氾濫を、弘法大師が秘法によって鎮めたという「治水伝説」が残るお寺です。
石垣の上に建つ本堂は、まるで城壁のような堅固さを感じさせ、地域の人々を水害から守り続けてきた歴史を今に伝えています。
| 山号・院号 | 金輪山 勅王院(きんりんざん ちょくおういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗智山派 |
| 御本尊 | 地蔵菩薩(じぞうぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・カカカ・ビ・サンマエイ・ソワカ |
| 御詠歌 | みな人(ひと)の 詣(まい)りてやがて 泰山寺(たいさんじ) 来世(らいせ)の引導(いんどう) 頼(たの)みおきつつ (意味:人々よ、泰山寺に参拝し、お地蔵様に現世の安穏だけでなく、来世の極楽浄土への導きもお願いしておきなさい) |
56番札所・泰山寺の歴史と縁起
弘仁6年(815年)、弘法大師がこの地を巡錫した際、蒼社川がたびたび氾濫し、村人たちが苦しんでいるのを見ました。
大師は村人たちを救うため、川の堤防を築き、その土手に祭壇を設けて「土砂加持(どしゃかじ)」という秘法を行いました。
この秘法は、中国の「泰山」で行われる鎮魂の法になぞらえたもので、満願の日に地蔵菩薩の姿が空に現れ、治水工事は見事に完成したと伝えられています。
大師は、その場所に地蔵菩薩を刻んで堂宇を建て、「泰山寺」と名付けました。さらに「不忘(わすれず)の松」を植えて、この恩恵を後世に伝えたと言われています。
境内の見どころ:石垣の参道と地蔵信仰
田園風景の中に小高く盛り上がった丘の上にあり、長い石段を登って参拝します。
1. 石積みの参道と境内
駐車場から本堂へは、美しい石垣に囲まれた石段を登っていきます。
この石垣は、かつて治水工事を行った歴史を彷彿とさせる堅牢な作りです。階段を登りきると、静寂に包まれた境内が広がり、心を落ち着かせてくれます。
2. 庶民を救う「地蔵菩薩」
本堂に祀られている御本尊は地蔵菩薩です。
お地蔵様は、最も弱い立場の人々に寄り添い、現世の苦しみだけでなく、地獄の苦しみからも救ってくれるありがたい存在。治水で村人を救った大師の慈悲の心が、このお地蔵様に込められています。
3. 不忘(わすれず)の松
境内には、弘法大師が治水の祈願を忘れないようにと植えたとされる「不忘の松」がありました。
現在の松はその代替わりをしたものですが、大師が村人の安寧を願った強い想いは、今もこの地の松に宿り、参拝者を見守っています。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。泰山寺の御朱印には、地蔵菩薩を表す梵字(カ)と「本尊 地蔵菩薩」の文字が記されます。
力強く、温かみのある地蔵菩薩の御朱印は、持つ人に安心感を与えてくれます。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県今治市小泉1-9-18
- 第55番からの距離: 第55番札所・南光坊から約3km。車で約10分、徒歩で約45分。蒼社川を渡り、田園地帯を進みます。
- 駐車場: あり(無料)。山門の下に駐車場があります。
- 次の札所へ: 第57番札所「栄福寺」までは約3.2km。車で約10分、徒歩で約45分。再び蒼社川の方向へ戻るようなルートになります。
まとめ:災害除けと安らぎの地
第56番札所・泰山寺は、自然の猛威から人々を守ろうとした大師の「行動する祈り」が伝わるお寺です。 治水の歴史に感謝し、優しいお地蔵様に手を合わせることで、日々の平穏な生活への感謝が湧いてくることでしょう。