第56番札所から約3.2キロ。今治の平野部から少し山手に入った府頭山(ふちゅうざん)の麓に、第57番札所・栄福寺(えいふくじ)があります。
ここは、映画化もされたエッセイ『ボクは坊さん。』の著者である僧侶が住職を務めたことでも知られるお寺です。
境内はコンパクトながらも手入れが行き届き、バリアフリーのスロープが整備されるなど、現代の巡礼者に寄り添う温かい配慮が感じられます。瀬戸内海の平穏を祈願した歴史を持つ、清々しい霊場をご案内します。
| 山号・院号 | 府頭山 無量寿院(ふちゅうざん むりょうじゅいん) |
|---|---|
| 宗派 | 高野山真言宗 |
| 御本尊 | 阿弥陀如来(あみだにょらい) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン |
| 御詠歌 | この世(よ)には 弓矢(ゆみや)を守(まも)る 八幡(やはた)なり 来世(らいせ)は弥陀(みだ)を 頼(たの)め人々(ひとびと) (意味:現世では武運の神・八幡神が守ってくれる。来世の救いは阿弥陀如来にお願いしなさい、人々よ) |
57番札所・栄福寺の歴史と縁起
弘仁年間(810〜824年)、弘法大師がこの地を巡錫した際、瀬戸内海の波が穏やかであることを願い、府頭山の山頂で護摩祈祷を行いました。
その満願の日、海から阿弥陀如来が現れ、光を放ったといいます。大師はその姿を刻んで本尊とし、寺を建立しました。「栄え、福が来るように」という願いを込めて「栄福寺」と名付けられました。
明治の神仏分離までは、山頂にある八幡神社の別当寺(神社を管理する寺)でした。御詠歌に「八幡なり」とあるのはそのためです。その後、山頂から現在の麓の地へ移転しましたが、海と陸の安全を守る寺としての信仰は今も続いています。
境内の見どころ:お願い地蔵と現代への優しさ
古き良き伝統と、現代的な心配りが調和した境内は、訪れる人を優しい気持ちにさせてくれます。
1. 願いを叶える「お願い地蔵尊」
大師堂の横には、愛らしいお顔をした「お願い地蔵尊」が祀られています。
「どんな願い事でも、一つだけなら必ず叶えてくれる」と言われており、多くの参拝者が真剣に手を合わせています。欲張らず、心からの「一つ」の願いを託してみてください。
2. 箱車に乗った少年の伝説
境内には、足の不自由な少年の伝説が残っています。
昔、足の不自由な少年が、箱車に乗って犬と一緒に巡礼をしていました。この寺で一心に祈願したところ、足が治り、箱車を置いて元気に歩いて帰ったといいます。大師堂には、その時の箱車と杖が奉納されており、奇跡の物語を今に伝えています。
3. バリアフリーで美しい境内
栄福寺は、車椅子の方でも参拝しやすいよう、スロープが整備されるなどバリアフリー化が進んでいます。
また、本堂や庫裏(くり)などの建物も美しく整えられており、現代のお遍路さんにとって非常に参拝しやすい、「開かれたお寺」という印象を与えてくれます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。栄福寺の御朱印には、阿弥陀如来を表す梵字(キリーク)と「本尊 阿弥陀如来」の文字が記されます。
福が栄えると書く寺名の通り、幸せを招いてくれそうな御朱印です。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 愛媛県今治市玉川町八幡甲200
- 第56番からの距離: 第56番札所・泰山寺から約3.2km。車で約10分、徒歩で約45分。のどかな田園風景の中を進みます。
- 駐車場: あり(無料)。山門前に整備された駐車場があります。
- 次の札所へ: 第58番札所「仙遊寺」までは約2.5km。距離は短いですが、標高300mの山頂へ向かうため、急な山道を登ります(車でも急坂です)。
まとめ:海風の祈りと現代の癒やし
第57番札所・栄福寺は、弘法大師の海上安全への祈りと、現代の人々への優しい配慮が共存するお寺です。 お願い地蔵に願いを込め、整えられた境内を歩けば、心の中もすっきりと整理されるような、清々しい気持ちになれるでしょう。