第69番札所から約4.5キロ。のどかな田園風景が広がる三豊市豊中町に、遠くからでもひときわ目立つ朱色の五重塔が見えてきます。ここが第70番札所・本山寺(もとやまじ)です。
四国八十八ヶ所の中で唯一、馬頭観音を御本尊とするお寺であり、その本堂は鎌倉時代の姿を今に伝える貴重な「国宝」に指定されています。
長宗我部軍の攻撃を「蜂の大群」が撃退したという伝説が残る、奇跡と歴史に彩られた大寺院をご案内します。
| 山号・院号 | 七宝山 持宝院(しっぽうざん じほういん) |
|---|---|
| 宗派 | 高野山真言宗 |
| 御本尊 | 馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・アミリト・ドハバン・ウン・パッタ・ソワカ |
| 御詠歌 | 本山(もとやま)に 誰(たれ)か植(う)えるし 花(はな)なれや 春(はる)こそたのめ 暮(く)るる秋(あき)にも (意味:本山寺には誰が植えたのだろうか、美しい花が咲いている。春の花も楽しみだが、暮れゆく秋の紅葉もまた楽しみである) |
70番札所・本山寺の歴史と縁起
大同2年(807年)、平城天皇の勅願を受けた弘法大師が、この地を一晩で建立したという伝説が残っています。
御本尊には、頭上に馬の頭を戴き、憤怒の形相をした「馬頭観音」を安置しました。これは四国霊場では唯一の珍しい御本尊です。
戦国時代、長宗我部元親が四国統一の軍を進めた際、多くの寺院が焼き討ちに遭いましたが、本山寺は奇跡的に兵火を免れました。
伝説によると、住職が本堂に立てこもっていると、本堂の中から無数の蜂(ハチ)が飛び出し、攻め寄せる長宗我部軍に襲いかかったといいます。兵士たちは恐れをなして退散し、お寺は守られました。この「蜂の奇跡」により、鎌倉時代の本堂が今に残ることとなりました。
境内の見どころ:国宝と五重塔の美
仁王門をくぐり、長屋門のような中門を抜けると、広々とした境内に壮麗な建築物が並びます。
1. 鎌倉時代の傑作「国宝・本堂」
正安2年(1300年)に建立された本堂は、戦火を免れた数少ない建物の一つで、国宝に指定されています。
寄棟造(よせむねづくり)、本瓦葺きの堂々たる外観は、まるで城郭のような力強さを感じさせます。当時の建築技術の粋を集めた、四国を代表する名建築です。
2. ランドマーク「五重塔」
境内に入ってまず目を引くのが、高さ約48メートルの五重塔です。
江戸時代に再建されたものですが、その朱色の塔は遠くからでもよく見え、この地域のランドマークとなっています。青空に映える五重塔と国宝の本堂のコントラストは、絶好の撮影スポットです。
3. 霊場唯一「馬頭観音」
御本尊の馬頭観音(秘仏)は、馬が草をむさぼり食うように、人々の煩悩や災難を食べ尽くしてくれると言われています。
また、動物供養やペットの健康、交通安全、農耕の守り神としても信仰されています。馬や動物にゆかりのある方は、ぜひ念入りにお参りください。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。本山寺の御朱印には、馬頭観音を表す梵字(カン)と「本尊 馬頭観音」の文字が記されます。
力強く珍しい馬頭観音の御朱印は、災厄を払い、道を切り開く力を与えてくれそうです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 香川県三豊市豊中町本山甲1445
- 第69番からの距離: 第69番札所・観音寺から約4.5km。車で約15分、徒歩で約1時間10分。財田川を渡り、田園地帯を進む平坦なルートです。
- 公共交通機関: JR予讃線「本山駅」から徒歩約15分。駅からのアクセスも比較的便利です。
- 駐車場: あり(無料)。仁王門の前に広い駐車場があります。
- 次の札所へ: 第71番札所「弥谷寺」までは約12km。三豊市の平野部を抜け、再び山間部へと向かいます。
まとめ:蜂が守った国宝の輝き
第70番札所・本山寺は、広大な境内に国宝や五重塔が並ぶ、見ごたえたっぷりの大寺院です。 蜂の伝説に守られた歴史の奇跡を感じながら、珍しい馬頭観音様に日々の悩みを食べ尽くしてもらい、心軽やかに次の旅路へ進みましょう。