第71番札所の山を下り、善通寺市ののどかな田園風景の中に佇むのが第72番札所・曼荼羅寺(まんだらじ)です。
創建は推古天皇の時代と古く、弘法大師の出身氏族である「佐伯家(さえきけ)」の氏寺として建てられました。
唐(中国)から帰国した大師が、持ち帰った「両界曼荼羅(りょうかいまんだら)」を安置したことから、この寺名になったと伝えられています。歴史の深さと、平地のお寺ならではの穏やかな空気が魅力です。
| 山号・院号 | 我拝師山 延命院(がはいしざん えんめいいん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗善通寺派 |
| 御本尊 | 大日如来(だいにちにょらい) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・バザラ・ダト・バン |
| 御詠歌 | わずかなる 泉(いずみ)の水(みず)を むすぶにも 誓(ちか)いは深(ふか)き 曼荼羅(まんだら)の寺 (意味:手ですくえばほんのわずかな泉の水であっても、そこに込められた仏の誓いは、曼荼羅の教えのように広大で深いものである) |
72番札所・曼荼羅寺の歴史と縁起
推古4年(596年)、弘法大師の先祖である佐伯家の氏寺「世坂寺(よさかでら)」として創建されました。
その後、唐から帰国した弘法大師が、亡き母・玉依御前(たまよりごぜん)の菩提を弔うため、唐から持ち帰った「金剛界」と「胎蔵界」の二つの曼荼羅をこの寺に安置しました。
大師は、唐の青龍寺にならって伽藍を整備し、寺号を「曼荼羅寺」と改めました。佐伯家の菩提寺として、また弘法大師ゆかりの重要な霊場として、1400年以上の歴史を刻んでいます。
境内の見どころ:笠松伝説と聖観音
平坦で歩きやすい境内には、大師の伝説を伝えるスポットや、美しい庭園があります。
1. 弘法大師お手植え「笠松」
かつて境内には、弘法大師がお手植えされたと伝わる樹齢1200年の「不老松(ふろうまつ)」がありました。
高さ4メートルに対し直径が17〜18メートルにも広がる笠のような形から「笠松」と呼ばれ親しまれてきましたが、残念ながら平成14年に松くい虫の被害で枯れてしまいました。
現在はその幹の一部が保存・展示されており、また、その姿を受け継ぐ新たな松が植えられ、伝説を今に伝えています。
2. 美しい「聖観音立像」
本堂の背後にある観音堂には、聖観音立像が祀られています。
檜の一木造りで、平安時代後期の作とされ、国の重要文化財ではありませんが県の有形文化財に指定されています。端正で美しいお姿の観音様です。
3. 西行法師ゆかりの「西行の昼寝石」
平安時代末期の歌人・西行法師(さいぎょうほうし)がこの寺を訪れた際、笠松の上で昼寝をしたという逸話が残っており、その時に座ったとされる「西行の昼寝石」が境内の入り口付近にあります。
「笠掛桜(かさかけざくら)」という桜の木もあり、風流な歴史ロマンを感じさせます。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。曼荼羅寺の御朱印には、大日如来(金剛界)を表す梵字(バン)と「本尊 大日如来」の文字が記されます。
密教の世界観そのものである「曼荼羅」の名を冠した御朱印は、宇宙の真理とつながるような深みがあります。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 香川県善通寺市吉原町1380-1
- 第71番からの距離: 第71番札所・弥谷寺から約4km。山道を下り、平野部へ出ます。車で約15分、徒歩で約1時間。
- 駐車場: あり(有料:普通車200円)。山門前に民営の駐車場があります。
- 次の札所へ: 第73番札所「出釈迦寺」までは約0.5km。すぐ目の前に見える山の中腹へ向かって、緩やかな坂道を登ります。徒歩でも10〜15分ほどです。
まとめ:曼荼羅の世界観に触れる
第72番札所・曼荼羅寺は、弘法大師のルーツである佐伯家ゆかりの、静かで落ち着いたお寺です。 笠松の伝説に思いを馳せ、曼荼羅の教えである「大いなる調和」を感じながら、すぐ近くにある次の札所へ向かいましょう。