第73番札所から約2.5キロ。善通寺市の中心部近く、兜(かぶと)のような形をした小高い山「甲山(かぶとやま)」の麓に、第74番札所・甲山寺(こうやまじ)があります。
ここは、弘法大師が日本最大のため池「満濃池(まんのういけ)」の修築工事を行った際、成功を祈願して開いたお寺です。
境内には、可愛らしい「うさぎ」の瓦や像があちこちに見られ、お参りする人の心を和ませてくれます。岩窟に祀られた毘沙門天の神秘的な雰囲気と、うさぎの愛らしさが同居する、ユニークなお寺をご案内します。
| 山号・院号 | 医王山 多宝院(いおうざん たほういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗善通寺派 |
| 御本尊 | 薬師如来(やくしにょらい) |
| 開基 | 弘法大師(空海) |
| 御真言 | オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ |
| 御詠歌 | 十二神(じゅうにしん) 味方(みかた)にもてる 戦(いくさ)には 己(おの)れと心(こころ) 甲山(かぶとやま)かな (意味:薬師如来の十二神将を味方に持てば、己の心も甲山のように揺るぎないものとなり、人生の戦いに勝てるだろう) |
74番札所・甲山寺の歴史と縁起
弘仁12年(821年)、弘法大師は嵯峨天皇の命を受け、度重なる決壊で人々を苦しめていた満濃池の修築工事の監督に就きました。
大師はこの甲山で、薬師如来を刻んで修復工事の成功を祈願しました。すると、数万人もの人々が協力し、わずか3ヶ月という短期間で難工事を完成させることができました。
この功績により、朝廷から報奨金が下賜され、大師はその一部を使ってお堂を建て、祈願に使った薬師如来を本尊として寺を開きました。山の形が兜(かぶと)に似ていることから「甲山寺」と名付けられました。
境内の見どころ:16羽のうさぎと岩窟
こぢんまりとした境内ですが、探してみたくなる隠れキャラクターや、パワースポットがあります。
1. 境内に隠れる「うさぎ」たち
甲山寺の山門や中門の屋根瓦には、なんと「うさぎ」がいます。親子で遊んでいたり、月を見ていたりと、その数全部で16羽。
これは御本尊の脇侍である月光菩薩が持つ「月」にうさぎが住むという伝説や、この地がうさぎに縁があることから作られたと言われています。最近では、うさぎの石像も増えており、撫でると運気が上がるとも言われています。
2. パワースポット「毘沙門天の岩屋」
本堂の左手奥には、自然の岩窟を利用した「岩屋」があります。
大師が満濃池の工事成功を祈っている時、夢に毘沙門天が現れ、励ましてくれたという伝説があり、大師はその姿を刻んでこの岩屋に祀りました。薄暗い岩屋の中はひんやりとしており、強い力を感じる場所です。
3. 大師お手植えの「親子松」
山門を入ってすぐの場所には、かつて大師が植えたとされる松がありました。
現在は代替わりしていますが、一本の根から二つの幹が分かれて伸びる姿から「親子松」と呼ばれ、家庭円満や夫婦和合の象徴として親しまれています。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。甲山寺の御朱印には、薬師如来を表す梵字(バイ)と「本尊 薬師如来」の文字が記されます。
うさぎのお守りなども授与されており、女性に人気があります。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 香川県善通寺市弘田町1765-1
- 第73番からの距離: 第73番札所・出釈迦寺から約2.5km。車で約10分、徒歩で約40分。山を下り、平野部へ戻るルートです。
- 駐車場: あり(無料)。山門のすぐ横に駐車場があります。
- 次の札所へ: 第75番札所「善通寺」までは約1.6km。車で約5分、徒歩で約20分。弘法大師御誕生の地である大寺院はすぐそこです。
まとめ:難工事を成功させた祈りの力
第74番札所・甲山寺は、弘法大師の偉業(満濃池の修築)を支えた祈りの場所です。 可愛らしいうさぎに癒やされ、毘沙門天の力強さに触れた後は、いよいよ大師がお生まれになった聖地・善通寺へと向かいましょう。