第86番札所から再び内陸へ約7キロ。さぬき市長尾の中心街に、第87番札所・長尾寺(ながおじ)があります。
四国八十八ヶ所巡礼もいよいよ大詰め。ここは、最後の大師堂である第88番大窪寺へと向かう前の「最終地点」です。
源義経を愛し、その別れの後にこの寺で得度(とくど)したという静御前(しずかごぜん)の物語や、地元の人々に愛される「長尾の観音さん」としての温かな風情が魅力の霊場をご案内します。
| 山号・院号 | 補陀落山 観音院(ふだらくさん かんのんいん) |
|---|---|
| 宗派 | 天台宗 |
| 御本尊 | 聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ) |
| 開基 | 行基菩薩 |
| 御真言 | オン・アロリキャ・ソワカ |
| 御詠歌 | あしびきの 山(やま)鳥(どり)の尾(お)の 長尾(ながお)寺(でら) 秋(あき)の夜(よ)すがら 御名(みな)を唱(とな)えよ (意味:秋の夜を徹して、この長尾寺で仏の御名を唱え、悟りへの道を祈り続けなさい) |
87番札所・長尾寺の歴史と縁起
天平11年(739年)、行基菩薩がこの地を巡錫(じゅんしゃく)していた際、柳の霊木を見つけ、その木で聖観音像を刻んで安置したのが始まりとされます。
後に弘法大師が唐へ渡る際、この寺を訪れて入唐の無事を祈願しました。帰国後には、再びこの地を訪れて大般若経を書き写し、護摩を修したと伝えられています。
もともとは真言宗のお寺でしたが、現在は比叡山延暦寺を総本山とする「天台宗」の寺院となっており、四国霊場の中では数少ない天台宗の一つです。
境内の見どころ:静御前の足跡と結願への道
門前町として栄えた活気と、静かな祈りの空間が調和した境内です。
1. 静御前が剃髪した「得度の地」
源義経の側室であった静御前は、義経が奥州へ落ち延びた後、母の磯禅師(いそのぜんじ)と共にさぬき市へと戻りました。
文治4年(1188年)、彼女は長尾寺で剃髪して仏門に入りました。境内には彼女が切った髪を納めたとされる「静御前髪切塚」や、その決意を支えた母の墓があり、今も悲恋の物語に涙する参拝者が絶えません。
2. 重要文化財「経塚」と長尾天満宮
本堂の左右にある二基の石塔(経塚)は、弘法大師が大般若経を納めた場所と伝えられ、国の重要文化財に指定されています。
また、境内には学問の神様として知られる菅原道真公を祀る「長尾天満宮」もあり、受験シーズンには多くの学生も訪れます。
3. 結願への最終準備を整える
長尾寺は「結願前の寺」として、最後の大窪寺へ向かう前の精神的な準備をする場所でもあります。
門前にはお遍路さんのための宿や店が並び、ここから標高の高い「大窪寺」へと挑む、四国遍路最後の険しい道のりが始まります。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。長尾寺の御朱印には、聖観音を表す梵字(サ)と「本尊 聖観世音」の文字が記されます。
「天台宗」ならではの筆致と、結願を目前にした緊張感が伝わる、思い出深い一枚となるでしょう。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 香川県さぬき市長尾西653
- 第86番からの距離: 第86番札所・志度寺から約7km。車で約15分、徒歩で約1時間半。さぬき平野ののどかな道を進みます。
- 公共交通機関: 高松琴平電気鉄道(ことでん)長尾線「長尾駅」から徒歩約3分。終着駅のすぐそばです。
- 駐車場: あり(無料)。山門の前に整備された駐車場があります。
- 次の札所へ: 第88番札所「大窪寺」までは約16km。いよいよ最後の結願寺へ、山あいの道を登っていきます。
まとめ:静御前の祈りと、結願の夜明け
第87番札所・長尾寺は、静御前の切ない物語を包み込みながら、お遍路さんの最後の一歩を応援してくれるお寺です。 長かった旅の思い出を振り返り、いよいよ最後の一寺「大窪寺」へ。心を込めて、最後の山道へと足を進めましょう。