徳島から始まった「同行二人」の長い旅も、いよいよここが最終地点。第88番札所・大窪寺(おおくぼじ)です。
香川県と徳島県の県境近く、女体山(にょたいさん)の麓に佇むこの寺は、八十八ヶ所すべての巡礼を終える「結願(けちがん)」の霊場。本堂で最後のお勤めを終えた瞬間、こみ上げる感動と達成感は、歩んだ者にしか分からない特別なものです。
| 山号・院号 | 医王山 来迎院(いおうざん らいごういん) |
|---|---|
| 宗派 | 真言宗大覚寺派 |
| 御本尊 | 薬師如来(やくしにょらい) |
| 開基 | 行基菩薩 |
| 御真言 | オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ |
| 御詠歌 | 南無薬師(なむやくし) 諸病(しょびょう)なかれと 願いつつ 詣(まい)れる人は 大窪(おおくぼ)の寺 (意味:南無薬師如来様、どうかすべての病が癒えますようにと願いながら参拝する人々。ここはまさにその祈りを受け止める、大窪の寺である) |
88番札所・大窪寺の歴史と縁起
養老元年(717年)、行基菩薩がこの地を訪れ、石の洞窟で修行したのが始まりです。後に弘法大師が唐から帰国後、この山で薬師如来の秘法を修めました。
大師は、唐の師・恵果和尚から授かった「錫杖(しゃくじょう)」をこの地に納め、山号を「医王山」、寺名を「大窪寺」と定めて結願の霊場としました。
古くから「女人禁制」の山が多い中で、大窪寺は比較的早くから女性の参拝を認めていたため、「女人高野(にょにんこうや)」としても親しまれてきました。
結願の証:寶杖堂と結願証
すべての札所を巡り終えたお遍路さんを、優しい静寂が包み込みます。
1. 金剛杖を納める「寶杖堂(ほうじょうどう)」
本堂の横には、全国から届いた数え切れないほどの金剛杖が納められている「寶杖堂」があります。
お大師様の化身として旅を共にした杖をここに奉納することで、一つの大きな区切りとなります(※杖は高野山まで持参される方もいます)。奉納された杖は、毎年春と夏の供養祭にて焚き上げられます。
2. 達成の証「結願証(けちがんしょう)」
八十八ヶ所すべての朱印を終えると、納経所で「結願証(けちがんしょう)」をいただくことができます(有料)。
自分の名前が入ったこの証を手にしたとき、四国遍路の旅が真に完結したことを実感するでしょう。多くの人が、この瞬間のために数百キロの道のりを歩みます。
3. 法螺貝を持つ珍しい「薬師如来」
本堂の御本尊は、薬師如来坐像です。通常、薬師如来は左手に「薬壺(くすりつぼ)」を持っていますが、大窪寺の御本尊は「法螺貝(ほらがい)」を持っている非常に珍しい姿をしています。
これは、あらゆる悩みや邪気を吹き払うという強い救済の力を象徴していると言われています。
御朱印・納経について
参拝後は納経所へ。大窪寺の御朱印には、薬師如来を表す梵字(バイ)と「本尊 薬師如来」の文字が記されます。
最後の朱印が押され、納経帳が埋まった時の重量感は、そのまま旅の重みそのものです。
アクセス・駐車場・参拝案内
- 所在地: 香川県さぬき市多和兼割96
- 第87番からの距離: 第87番札所・長尾寺から約16km。緩やかな、しかし長い登り坂が続く最後の難所です。車で約30分、徒歩で約5〜6時間。
- 駐車場: あり(無料)。門前に大きな駐車場があり、売店や食事処も充実しています。
- 名物グルメ: 参拝後の定番は、門前のお店で食べる「打ち込みうどん」です。野菜たっぷりの熱い味噌煮込みうどんは、疲れた体に深く染み渡ります。
まとめ:結願、そして感謝の旅路へ
第88番札所・大窪寺は、四国遍路のゴールであると同時に、新しい自分としてのスタート地点でもあります。 1200キロの道のりを支えてくれたすべての人や出来事に感謝を捧げ、心ゆくまで「結願」の喜びを噛み締めてください。 お遍路を終えた後は、多くの人がお礼参りのために和歌山県の「高野山・奥之院」へと向かいます。